乙武:なるほど。日本でも2020年に向けて急速にサポート体制が整ってきているとはいえ、まだまだ環境の差は大きいですね。日本でプレーしている川村選手としては、現状、この競技にはどのような支援が必要だと考えていますか?
川村:ゴールやフェンスが常設された専用コートが、せめて国内に1カ所だけでもあれば、だいぶ状況は変わると思います。現在は毎回、ボランティアの皆さんなどの助けを借りながら、そのつど設営していますから。その意味では、人的な支援はたくさんいただいているとも言えますが。
乙武:本当はコートといわず、専用競技場のひとつも欲しいところですよね。
川村:ああ、それは理想的ですね。ブラインドサッカーの聖地と言われるような場所がほしいです。
乙武:高校野球でいう甲子園のような、わかりやすいシンボルがあることは、競技の振興において大切だと思います。どこかの自治体が協力してくれれば話は早そうですけどね。使われなくなった体育館などを改装して、「ブラサカの街」として売り出すなんて、アイデアとしては面白いのでは?
川村:いいですね。そのためにも、まずは世界レベルでの結果を出さなければなりません。
目が見えない状態での、無防備な肉弾戦の怖さ
乙武:ところで、昨年は強豪イランに初めて勝利を収めて話題になりましたが、日本代表チームはいま、世界でどのくらいのレベルにあるのでしょうか。
川村:国際視覚障害者スポーツ連盟(IBSA)という団体が発表する世界ランキングでいえば、日本はいま9位です。
乙武:ブラインドサッカーの強豪国といえば、なんといってもブラジル、アルゼンチン、中国が3強で、それに次ぐのがスペイン、イングランドなどのヨーロッパ諸国ですよね。そうした上位陣と日本の間には、どのくらいレベルに開きがあると感じていますか?
川村:正直、スペイン、イングランドといった第2グループとそれほど差がないことは、昨年の試合でも証明されたと思います。ただ、その上の3強との差は、まだまだ大きいですね。
乙武:普通のサッカーの場合、強豪チームにはわかりやすい強さがあります。例えばスピードが抜群に速かったり、ディフェンス面に長けていたり。ブラインドサッカーの場合、その3強が感じさせる強さは、どのようなところにありますか。
川村:ブラジルやアルゼンチンに関して言えば、人々の日常にサッカーが密着している国ですからね。戦術面にしても勝負への執着にしても、ほかの国とはそもそもの下地から大きく異なっている印象を受けます。ブラジルと戦ったときも、彼らがプライドを持って全力で勝利を掴みにきていることがよく実感できました。
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