二足のわらじでパラのメダル狙う研究者の戦い 車椅子「パラバドミントン」の第一人者が語る

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長島:それはもちろんありますね。私の場合、もともと中学時代からバドミントンをやっていて、せいぜい県大会の上位くらいの成績だったのが、障害を負ったことで世界ランキングを争うようになりました。その結果、こうして日の丸を背負い、会社からもさらなるバックアップを得てプレイするようになり、プレッシャーも戸惑いも大きいです。

乙武:とくに長島選手の場合、研究者としてのハードワークも抱えています。こうして二足のわらじで競技に打ち込む現状について、ご自身はどう感じていますか。

長島:どうしても仕事に時間が取られる分、細かなトレーニングや体のケアに充てる時間が不足するのは事実です。ただ、2つの軸足があることで、精神的なバランスが保てている面は強いと思います。仕事がうまくいかないときは競技に救われますし、逆もまたしかりなので。

乙武:なるほど。仕事でも競技でも実績を残す長島選手の例は、会社員アスリートの新しいモデルケースになりそうですね。

2021年以降への提言

乙武:ところで、東京パラリンピックの招致が決定してから、試合会場に足を運ぶお客さんの数は増えていますか?

長島:一般のお客さんもそうですが、それ以上に関係者の数が増えた印象です。所属するLIXILもそうですが、同僚などが応援に来てくれるのは、やはりパラリンピックへの期待があればこそでしょう。

乙武:今までは見向きもしなかったくせに、なんて意地悪な感情は湧きませんか?(笑)

長島:いえいえ、ありがたいですよ(笑)。それにLIXILというのは、2011年に5つの会社が統合してできたため、社員の心をひとつにする必要がありました。自分が競技で結果を出すことで社員の心をひとつに束ねる力になれるのであれば、これほど嬉しいことはありません。

乙武:また、こうしてメディアに取り上げられる機会も増えていると思います。

長島:そうですね、メディア出演や講演をさせていただく機会は増えました。パラバドミントンをもっと知ってもらうきっかけになればいいのですが。

乙武:これから東京パラリンピック開催に向け、注目度はさらに高まっていくことになると思いますが、一方で気になるのは2021年以降です。今は金銭面や体制面で万全なサポートが受けられていても、その環境がこのまま維持されるかどうかは不透明ですよね。

長島:現状がある意味でバブルなのは理解しています。だからこそ今のうちに自分が広告塔となることで、この先に少しでもいい環境を残せるよう頑張りたいですね。

乙武:おそらく2021年以降は、マイナスを最低限にとどめられる競技と、一気に没落する競技と、明暗がはっきり分かれるのではないかと思います。今のバブルにあぐらをかいているようではいけないですよね。泣いても笑っても、パラリンピックはもう来年です。

長島:パラバドミントンでは、2019年3月から2020年3月までの14大会でポイントを競い、それによってパラリンピック出場の有無が決まります。海外での大会も含まれるため、非常に過酷な1年になりますが、どうにか勝ち残り、そして来年のパラリンピック本番でもいい結果を残せるように頑張ります。

乙武:より多くの人に競技を知ってもらうために、パラリンピックはまたとないステージです。長島選手にはぜひ、この大舞台で活躍し、パラバドミントンの魅力を強くアピールしていただきたいと期待しています。頑張ってください!

乙武 洋匡 作家

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おとたけ ひろただ / Hirotada Ototake

1976年、東京都生まれ。大学在学中に出版した『五体不満足』がベストセラーに。卒業後はスポーツライターとして活躍。杉並区立杉並第四小学校教諭などを経て、2013年に東京都教育委員に就任。著書に『だいじょうぶ3組』『だから、僕は学校へ行く!』『オトことば。』『オトタケ先生の3つの授業』など多数。

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