トヨタ自動車と日産自動車を分析する なぜ日産は、「独り負け」しているのか

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ここ1年間のドル/円相場を振り返りますと、昨年の9月は1ドル=79円前後で推移していました。そして2013年の9月時点では、1ドル=99円前後ですから、前年より約25%も円安が進んだことになります。

つまり、北米に向けた輸出による売上高や利益の円換算額が増えているのです。トヨタの発表によると、為替変動の影響による営業利益の押し上げ額は5400億円ということです。決して日本での生産台数・販売台数が増えたわけではない、という認識が必要です。

もうひとつ、業績の押し上げ要因として、米国の自動車市場が回復してきているという点もあります。指標によると、米国の「自動車販売台数」の推移を見ますと、2012年8月は年換算で1442万台、9月は同1471万台という水準でしたが、2013年8月は1603万台まで回復していました。こちらも、北米での販売が伸びた要因になっているのです。

そのほか、トヨタの発表によりますと、営業利益が伸びた理由として、コストカットによる原価の改善が1400億円、営業面の努力による影響が400億円あったということです。円安や北米の自動車市場の回復という環境要因に加え、トヨタが得意とするコストカットなどの自社努力も業績に貢献したのです。

ヒット車種をつくれなかった日産自動車

次に、日産自動車の2013年4~9月期の決算内容を分析していきます。冒頭でも触れましたが、大手自動車メーカーが軒並み増収増益となっている中で、なぜ日産だけが業績を落としているのでしょうか。

まず、損益計算書(6ページ参照から見てみましょう。「売上高」は4兆636億円から4兆7562億円まで増えています。「売上原価」は微増していますが、「売上総利益」は6968億円から8330億円まで伸びています。

ただし、「販売費及び一般管理費」が4690億円から6111億円まで大幅に増えてしまったため、「営業利益」は2277億円から2219億円まで減少してしまいました。為替変動の好影響はあったものの、リコール費用やメキシコ工場の償却負担が営業利益を押し下げてしまったということです。

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