人殺し「耐性カンジダ菌」世界同時発生の恐怖 手を打たなければ世界で1000万人が犠牲に?

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抗生物質と抗真菌薬は人間の感染症との戦いに不可欠なものだが、抗生物質は家畜の病気予防に広く使われているし、抗真菌薬は防かび剤という形で農作物の腐敗防止に使われている。一部の専門家からは、こうした防かび剤の乱用が、薬剤耐性を持つ真菌の感染症が増える要因になった証拠があるとの指摘も出ている。

だが問題が拡大する一方で、一般の認知度は低い。理由の一端は、薬剤耐性菌による感染症の存在そのものが多くの場合、隠蔽されていることにある。原因が細菌であれ真菌であれ、耐性菌による感染症の公表には医療機関も自治体も消極的だ。そこを中心に感染症が広がっているかのように見られるのを恐れてのことだ。

いったいどこから来たのかは不明

マウント・サイナイ病院の患者が感染していたカンジダ・アウリス以外にも、薬剤耐性を持つ危険な細菌や真菌は何十種類もある。大きな脅威であるにもかかわらず、その多くが一般にはほとんど知られていない。

カンジダは病院における血流感染症の原因としては珍しくないが、主な菌種においては大きな薬剤耐性の問題は出ていない。だがCDCによれば、カンジダ・アウリスの感染症のうち90%以上で少なくとも1つの薬剤への耐性がみられ、2つ以上の薬剤への耐性がみられるものも30%に達しているという。

CDCによれば、カンジダ・アウリスに感染した患者の半数近くが90日以内に死亡する。だが薬剤耐性を持つカンジダ・アウリスがいったいどこから来たのかについては、まだ明らかになっていない。「黒い湖から出てきた化け物だ」とCDCの真菌部門の責任者であるトム・チラーは言う。「底から上がってきて、今やどこにでもいる」

2015年の後半、ロンドン大学インペリアル・カレッジの感染症の専門家であるジョハンナ・ローズのところに、切羽詰まった様子の電話がかかってきた。相手はロンドン郊外にあるロイヤル・ブロンプトン病院で、何カ月も前からカンジダ・アウリスが住み着いており、根絶できずにいるという。同病院は肺と心臓を専門としており、ヨーロッパ全域そして中東から富裕な患者が集まっている。

「どこから来たのかまったく見当がつかない。これまで聞いたこともない菌だ。とにかく野火のように広がった」と、病院側は語ったとローズは言う。ローズは菌の遺伝子プロファイルを調べて病室から根絶するのに手を貸すと約束した。

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