「本屋大賞」批判はあっても高く支持される理由

直木賞と芥川賞にない「素人感」が一番の武器

やがて結果が売り上げに直結することが明らかになると、賞が欲しい作家や出版社が、書店員の歓心を買うために露骨な営業をかけるようになり、公正さがなくなった、という意見もある。実際そんな風評に嫌気が差した有川浩は、2012年、最終ノミネートに残ることを辞退してしまった。

2017年、先に直木賞を受賞していた恩田陸『蜜蜂と遠雷』が大賞に決まったときには、直木賞の対立軸として始まったはずの賞が当初の志を失ってしまった、と失望の声を上げる人もいた。

確かに批判は少なくない。しかし、いまでも本屋大賞は「書店の売り場を活性化させる」「これをきっかけに1冊でも多く本を売る」という目的を十分に達成している。やはり成功している企画と見るほかないだろう。

親近感もたせる「素人感」が特徴

日本に文学賞は数多いが、本屋大賞には際立った特質がある。その作品選出の仕組み、参加者、運営方法、演出、広報。この賞に一貫しているのは、ひとことで言えば「親近感をもたせる素人感」だ。日々売り場で読者と直に接している書店員ならではの感覚と言ってもいい。

これまで作家や評論家が選考する賞はたくさんあった。よく知られているのが直木賞と芥川賞だが、これらの賞は候補作家のそれまでの履歴、将来性、あるいは文学性などを重視しがちで、かならずしも一般の読者にとっつきやすい作品が選ばれるとは限らない。

いっぽう本屋大賞は、全国いずれかの書店に勤めている人であれば、誰にでも投票する権利がある。一般の読者の目線に近い人が、面白い小説を薦めたい、という動機で投票する。始まった頃に比べて参加する書店員たちの意識も変わってきた、と言われるが、少なくとも「最も売りたいものを選ぶ」という立場はブレていない。

2000年代に入る頃、折しも出版業界のなかで書店員という存在が脚光を浴びはじめていた。店頭のPOPがきっかけとなって全国的なベストセラーがいくつも生まれ、やがて帯の推薦文や書評、文庫の解説などに、いわゆる「カリスマ書店員」と呼ばれる人たちが起用されるようになった。彼らは熱烈に本を推薦してくれる。おおむね下り坂にある出版という産業にあって、過度に期待の目が向けられた。

こうした時期にスタートした本屋大賞は、初回から注目の試みとして新聞やテレビなどに取り上げられる機会を得た。

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