「本屋大賞」批判はあっても高く支持される理由

直木賞と芥川賞にない「素人感」が一番の武器

第1回の大賞を受賞した小川洋子の『博士の愛した数式』(新潮社)は、受賞前には約9万部ほどの中規模なベストセラーだったが、受賞後の反響がすさまじく、またたく間に20万部近くを増刷。「前年に直木賞をとった石田衣良『4TEEN』よりも売れ行きがいい」という新潮社の担当者のコメントが出るなど、当初の想定を超える実績を上げた。

賞を主催するNPO法人「本屋大賞実行委員会」の杉江由次は、出版社「本の雑誌社」の営業マンでもあるが、書店員たちと共に創設から賞の運営に携わってきた人だ。賞が成功した大きな要因のひとつに、やはり第1回のときの経験を挙げている。「メディアに取り上げてもらったおかげもあって、大賞もよく売れたでしょ。始める前は考えもしなかった。あれがなかったら、いまこんなに注目される賞にはなっていなかったと思います」という。

しかし、正直なところは……というかたちで、こうも語った。「だんだんとすごく騒がれる賞になっていますが、運営しているみんなの気持ちはね、いまでも“町のお祭り”という感じなんですよ」。

「賞の未来」は読者にかかっている

もともと実行委員会を構成している中心は、有志の書店員たちだ。誰ひとり文学賞を運営した経験などない。一回一回手さぐりで続けてきた、というのは確かな実感だろう。どうあっても素人感がにじみ出る。

その特徴が好転したところに、いまの本屋大賞がある。このまま素人感を堅持していけば、この賞の魅力はしばらく衰えないと思うが、そんなことは周りが言わずとも、運営している人たちは百も承知だろう。

では、読者が本屋大賞に対してできることは何なのか。けっきょく面白そうだと思ったらノミネート作や大賞を読んでみる、つまらなそうだと思ったら買わない、という原点に帰りつく。そして、そういう読者の選択に賞の未来がかかっている、というのは本屋大賞にとっても本望にちがいない。

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