中堅高校が「学校内個別指導塾」を導入するわけ 35校が導入、狙いはずばり「進学実績の向上」

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一般的な個別指導は学生アルバイト講師1人に対し生徒は2~3人で、1人が指導を受けている間、ほかの生徒は問題を解いたりする。白板も基本的に使わない。内容的には学校の授業を理解し、定期テストの得点を上げるための補習が主体だ。一方、TOMASは1対1で、内容は受験対策である。1対1のほうが当然月謝は高くなる。高い給料で受験対策ができる質の高い講師が集まるというわけだ。

質問型個別指導までなら他塾でもできるかもしれない。ただ、学校が必要としているのは進学実績だ。つまりカリキュラム型個別指導ができないと学校内個別指導は請け負えないということになる。

実際の効果はというと、導入2年の東亜学園は「校外模試の偏差値、センター試験の得点は上がってきている」(矢野理事長・校長)。利用時間延長の声が上がり、終了時間を7時30分から8時に延長した。導入から5年経過した目白研心も自習室を拡張。

「3年目くらいから手応えを感じた。利用者の進学実績が年々上がっている」(松下校長)。卒業生がチューターになるケースも出始め、2019年は旧帝大の1つ、北海道大に現役合格する生徒や早慶両方に合格する生徒も登場している。

国内私立高1300校に開拓の余地

中学、高校にとって塾は生徒を送客してくれる“お得意様”であるため、競合するスクールTOMASを導入していることを公にしたがらない。今回取材できなかった学校の中には、共学化と同時にスクールTOMASを導入、数年後に東大合格者を出すなどして、その学校の入学者偏差値が上昇する例も出ている。また、関東での実績を見てから導入が進む関西では、学校改革の目玉というより、西大和学園といった難関校での導入が多い。

国内の私立高校は約1300校。すべてがスクールTOMASの対象になるわけではないが、開拓余地は大きい。それでも、このサービスに手応えを感じている岩佐相談役の視線はさらに先へ向けられている。今年1月の第3四半期決算説明会の場でこう述べた。「導入が100校になったら、文部科学省に行ってみようと思う」。つまりは、全国の公立高校にこのサービスを提供するという提案だろう。

公立高校は約3500校と私立高校の2.7倍になる。スクールTOMAS社だけでできる規模ではないので、ライセンス供与や提携などが考えられるが詳細はわからない。ただ、100校は順調にいけば2020年6月には達成される。民が官を動かす日は、そう遠くないのかもしれない。

筒井 幹雄 東洋経済 記者

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つつい みきお / Mikio Tsutsui

『会社四季報』編集長などを経て、現職は編集委員。

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