中堅高校が「学校内個別指導塾」を導入するわけ 35校が導入、狙いはずばり「進学実績の向上」

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以前、高校に予備校が出張して放課後や土曜に授業をするという試みが話題になったが、定着してうまくいっているという話は聞かない。対するスクールTOMASは事業化から約5年が経過した2019年2月末で35校に導入、4月導入校が多いので6月末(第1四半期末)には45~50校へ拡大、東京と関西で専門の営業部隊(各10人)を作ったこともあり、2020年6月末には「80~100校にはなるだろう」(リソー教育の創業者、岩佐実次取締役相談役)と順風満帆の態。

うまくいっている理由は、予備校のような集団指導ではなく、個別指導だから。予備校は自らのメソッドを持ち込むので1つの教科で2つの教材があることになり(教科書と予備校のテキスト)、教え方が違うこともあって、生徒が混乱しかねない。また、集団指導で理解が遅い生徒が予備校の集団指導ならついていけるという保証はない。

集団授業での理解のばらつきに頭を悩ませていた、という東亜学園高校の矢野隆理事長・校長(撮影:尾形文繁)

東亜学園の矢野隆理事長・校長が頭を悩ましていたのも、集団授業での理解のばらつきだった。「野球なら全体練習の後に、各自が不得意な分野の練習をして技量を上げる。勉強で同じことができないかと考えていた」。2016年6月に開いた塾向けの学校説明会が終わってから、あいさつに来たリソー教育の社員と雑談をしていて、スクールTOMASの話を聞き、「これだと思った」(同)。

塾導入の理由はずばり「進学実績向上」

スクールTOMAS社の岩田政行取締役開発局局長によると、学校側の導入理由は大きく分けて3つある。少子化が進み、学校経営が成り立つ生徒数を確保するには、合格ラインを下げざるをえない学校が増えてきた。以前に比べて学力のばらつきが大きくなったため、早いうちからフォローして学力水準をそろえる必要があるというのが1つ目の理由。

次が2020年の大学入試改革対策の1つとしての導入。3つ目が教員の働き方改革だ。教員の負荷を高めずに、生徒の学力を底上げして、進学実績を上げたいというのが導入理由の最大公約数だろう。「生徒数が減っていく中、差別化して知名度を高めないと生き残れないという危機感を感じる。男子校、女子校の共学化など改革時の導入が多い」(岩田局長)。

東亜学園の近くにある私立目白研心中学校・高等学校の導入目的もずばり進学実績向上だ。1923年創立の女子校が2009年に共学化したものの、パッとしない。そこで白羽の矢が立ったのが、京華中学高等学校で校長を務め、定年退職した松下秀房校長。2012年に着任した松下校長は中期計画の目標に「進学校として評価される」を掲げ、目標達成のツールの1つとしてスクールTOMASを2013年4月に導入した。

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