中堅高校が「学校内個別指導塾」を導入するわけ 35校が導入、狙いはずばり「進学実績の向上」

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スクールTOMASは自習室、チューターが生徒の質問に対応する質問型個別指導、講師が1人の生徒に向き合うカリキュラム型個別指導の3つをスクールTOMAS社が提供し、学校は自習室を用意するというのが基本形。対象となる生徒をコース別で限る(例えば特進コースのみ)など、どう活用するかは学校の考え方で違ってくる。

学校内個別指導塾では、講師が1対1で生徒と向き合い、個別指導する(撮影:尾形文繁)

東亜学園の場合は全生徒が対象で、Dプロを使うか使わないかは生徒次第。目白研心の学習支援センター(東亜学園のDプロに当たるもの)も同様だが、週3回(英数国)の朝テスト(基礎力定着プログラム)は全員参加が義務づけられている。また、東亜学園の机は仕切りがあるが、目白研心の机は「受験は集団戦。教え合うことも必要」(松下校長)という理由で仕切りなし。こんなところにもちょっとした考えの違いが表れる。

とかく学校の中に塾があることがクローズアップされがちだが、要となるのは個別指導よりも自習のようだ。

「すべてお膳立てするのではなく、生徒が主体的に動けるような環境が大事。勉強するかしないかも自己判断」(矢野理事長・校長)、「ICTの発達で勉強の動機付けも変化する。主体性、自主性が重要になる」(松下校長)と、両校長とも生徒が自分から進んで勉強することを重視している。そのための仕掛けが新設、改装された自習室だ。

受託料は最低で月300万円

ソフトを受け持つスクールTOMAS社側は、センター長(常駐の責任者)が2週間に1回、利用者と面接し、個々人に合わせて立てた学習計画(プリントを使った演習主体)の進捗をチェック。入退室管理システムから学年、クラス、個人の利用時間を把握、チューターへの質問状況なども学校と共有する。センター長は職員会議にも出るし、研修という形で教員に生徒たちの抱える問題点や課題なども伝える。

自習室の段階で意欲のある生徒の底上げを図り、さらに高みを目指す生徒にはカリキュラム型個別指導を提供するというイメージだ(センター長は学校が保護者に個別指導の受講を勧める面談にも同席する)。

受託料は常駐の職員、チューターの数で違うが最低で月300万円、学校はこの金額を生徒(保護者)から徴収したり、一部補助を出したりする。東亜学園は導入までのリードタイムが短く、保護者に説明する時間が取れなかったことに加え「まずは利用して、よさをわかってもらいたい」(矢野理事長・校長)という理由で、初年度は全額を学校が負担、次年度からは生徒から集めた教育充実費の一部を充てている。

どの学校も生徒は何かしら費用負担をしているので、利用しないと損という状況だ。そこから先のカリキュラム型個別指導は完全に受益者負担。指導を受ける生徒が授業料を支払う。「カリキュラム型個別指導を使っても、学校内で完結するため、移動時間、交通費を考えれば外部の塾に行くより割安だろう」(小松亨・スクールTOMAS社教務局局長)。

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