時間に追われる毎日だったが、豊さんとの間にも2人の子どもに恵まれた。下の子が産まれてから生活はますます忙しく、目まぐるしくなっていった。恵子さんは、平日は子どもたちを学校に送り出し、フルタイムで事務の仕事に出かけた。自宅に帰ってからは、洗濯機を回して山盛りの洗濯物を片付けて、大量の食事も作らなければならない。土日は、食材の買い出しもある。毎日がてんてこまいだった。
始まった子どもたちへの虐待
2人目の子どもが生まれた頃から、豊さんとの間に亀裂が入り始めた。夫は連れ子の次男が少年野球を始めたことをきっかけに、地元の少年野球のコーチとして、子どもたちの指導をするようになっていった。そして、審判の資格を取るほどに熱中し始めた。
その頃から態度が尊大になり、その日の試合内容が気にいらないと、子どもを罵倒し、説教することが多くなった。豊さんは、酒の瓶を片手にしては、機嫌が悪くなり子どもに絡み、さらに飲む。その繰り返しだった。子どもが怒られる姿を見るのは、何より恵子さんにはつらかった。
「野球の試合で子どもがミスすると、『あの試合はどういうことだ!』とめちゃくちゃ怒るんです。気に食わないと、平手でたたく。体罰ですね。私はそんなに野球に詳しくないし何に怒っているのか、正直よくわからないんですが、子どもはよく夫の前で正座させられて、説教されてましたね。
一方的に怒鳴るんです。最初はトーンが低いのに、酒を飲み始めると、突然スイッチが入って怒鳴り散らす。『家から出ていけ!』と子どもに怒鳴って、裸足のまま外に出すこともありました。あまりにもかわいそうで『やりすぎだよ』と言うと、『いいんだよ! ほっとけば!』と言うんです。
子どもが外に出されて、しばらくすると、いなくなっていて近所を探し回ることも日常茶飯事でした。自分が一方的に罵倒するだけ罵倒して、子どもはおびえて泣いてるんですよ。部屋の外で正座させられたときもあって、本当にかわいそうでした」
連れ子とはいえ、わが子同然として育ててきた子どもがおびえる姿を見るのは、切なくて、つらかった。
しかし、豊さんは一度、キレ始めると止まらなかった。お酒を飲みながら、何時間でも子どもたちを説教する。そして、しまいにはアルコールの入ったグラスやボトルを投げつけるのだ。さらに、近所に聞こえるほどの大声を上げて、息子たちに怒鳴り散らした。「やめて!」と何度も制止したが聞かなかった。
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