DVに耐えるフィリピン人母子の壮絶な貧困 ママ友が毎月コメ30キロと現金3万円で支援

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マイカさんは日本に来て18年が経つが、日本語はほとんどできない(編集部撮影)
この連載では、女性、特に単身女性と母子家庭の貧困問題を考えるため、「総論」ではなく「個人の物語」に焦点を当てて紹介している。個々の生活をつぶさに見ることによって、真実がわかると考えているからだ。
今回紹介するのは、「私はひとり親家庭を支援しています。毎月10キロのおコメを3回、アマゾンやネットスーパーで送るようにしています。もうすぐ、1年になります。世の中は、資産のある方と、ない方と、二極化しています。ネットでおコメを送る支援方法もあることを、そういう支援が必要な人がいることを、知ってほしいです」と編集部にメールをくれた女性が支援する、フィリピン人の女性だ。

神奈川県の新興住宅街。週末なのに歩道は閑散としていた。フィリピン人で日本に永住権を持つマイカさん(49歳、仮名)と、ママ友・村上さんとファミリーレストランで待ち合わせる。2人の関係を言葉で説明するとちょっと複雑で、村上さんはマイカさんの長女(高校1年生)のクラスメートの母親になる。

日本人の夫は養育を放棄

家族は高校2年の長男、高校1年の長女、小学生の次女、そしてマイカさんだ。日本人夫は10年前から生活費を入れなくなり、一家は経済的に追いつめられた。2年前に現住居に引っ越したことで完全な別居状態になり、夫は養育を放棄、実質は母子家庭という状態だ。制度が複雑な永住権や夫が慰謝料や養育費を払いたくないという事情、子どもが独立するまでは戸籍上だけでも日本人の父親がいたほうがいいのではないか、という思いがあり、離婚届提出には至っていない。

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「生活は本当に苦しい。すごく苦しい」

マイカさんは話しながら泣いてしまった。仕事は非正規雇用の食品工場の工員で、彼女は日本で暮らすようになって18年が経つ。しかし、いまだ日本語は堪能ではない。簡単な会話ができる程度、わからない漢字は多く、日本語は子どもたちのほうが堪能なので代筆してもらうこともある。友達はほとんどいない。異国の地で子どもを育てるために身を削るような思いで働いてきたが、自分の収入だけではどうしても親子3人が貧困から抜けることはできなかった。電気ガスの支払いも大変で、夕飯の食材が買えない日もある。

「最近はこの村上さんと、長男に助けられています。長男は部活で忙しいのに無理してコンビニでバイトして、朝学校に行く前とか部活の後とかコンビニでバイトしてる。休みとか、まったくない。長男は家のおカネが苦しくなると、アルバイト代を全部くれる。2万円とか3万円とか。本当に申し訳ないと思うし、涙がでる」

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