DVに耐えるフィリピン人母子の壮絶な貧困 ママ友が毎月コメ30キロと現金3万円で支援

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「お母さんは外国人って知っていたので、最初は英語で手紙を書いてそのやり取りから始めました。マイカさんと直接電話で話すようになり、今までの深刻かつ辛い経験に何度もお互いに涙を流しました。それから、毎月30キロのおコメと、おカネを送っています。子どもたちは食べ盛り、10日で10キロくらいは食べちゃう。それとお兄ちゃん(長男)の高校進学のとき、教育資金で使ってと15万円を渡しました。おカネも援助するようになったのは、話を聞いていて、どうしても3万円くらい収入が足りないと思ったから」(村上さん)

どんな苦しい状況に陥っていても、首都圏では自己責任論が蔓延する。あまり聞いたことのない、隣人による徹底的な支援だ。家庭の事情と不規則な工場勤務、そして貧困でボロボロだったマイカさんを見て、村上さんは食べ物やおカネの支援をしながら、つねに相談に乗り、昼間だけの仕事に転職を勧めた。9時~18時の工場に職場を変えて、長男の公立高校の進学資金の心配もなくなり、彼女はだんだんと健康を取り戻した。寝不足が解消されて、過労でめまいがすることもなくなったという。

苦しんでいる人を支援したい

村上さんは某一流企業に新卒入社。現在、社歴20年目でその会社の女性管理職である。夫も似たような立場で、世帯収入は2000万円近くある。

「目の前にこんなにひどい現実があることを知りました。うちは旦那も協力的で子どもの面倒も見てくれますし、たまたま運がよくて管理職まで出世ができた。うちはもう余裕がある。余裕がある分は、苦しんでいる人を支援するべきじゃないかって思ったんです。マイカさんは頑張りすぎるほど、頑張っていました。だから、手助けしたいって思いました」(村上さん)

再びマイカさんが語る。村上さんに対しては、本当に心からありがたいといった様子だった。

「ダブルワークしても、手取り20万円以上は稼げない。平均合わせて18万円くらい。ずっとおカネがない生活、月に何日かおカネがまったくなくなって電気とかガスが使えないとか。村上さんには長男の進学費用も貸してもらって、もう本当にありがとうございます、としか言えません。クレジットカードに頼ることもなくなりました」

居住地の子ども2人の母子家庭の最低生活費(生活保護基準)は14万円程度+家賃になる。マイカさんは月5万5000円の家賃を払っているので、月平均18万円の収入では最低生活費の基準を割る。貧困水準なのに永住権の問題、慰謝料や養育費を払いたくない夫の事情もあり、離婚して児童扶養手当をもらうこともできなかった。

「児童扶養手当みたいな助けてくれる制度があるというのは、今までよく知りませんでした。誰もそういうことは教えてくれない」

フィリピンには離婚という概念がない。一夫多妻制が認められている国である。マイカさんは本来ならば、離婚して児童扶養手当5万3000円をもらうべき状況にあるが、そもそも日本にそういう制度があることを知らなかった。友達や相談できる相手もいなかったので、ただただ苦しいだけだった。現在は児童扶養手当相当のおカネや食べ物を村上さんが支援することによって、マイカさんは貧困ではない、貧乏程度の最低限の生活を送ることができている。

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