「部下を褒めるのが正しい」という残念な勘違い 「上から目線」の態度で、上下関係を誇示する

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上下関係が生む評価の関係は、よいときにはある程度の効果を上げる場合もありますが、同時に、大いに自主性を奪う可能性もあります。

では、自主性を育てるためには、どうしたらよいでしょうか。

プロセスに注目し、対等な関係性で思い伝えるということが必要です。「私はこう思う」という上司からの“Iメッセージ”を使えるといいですね。そして、労う、感謝する、気持ちを伝えることが大切です。

次の例を見てみましょう。

■部下の担当していた大掛かりな仕事が無事に終わったとき

単に褒めるとすれば「よくやった」「えらいぞ」「やればできるじゃないか」という言い方になりがちです。しかし、結果だけを評価するのはNGです。

自主性を育てる関わり方は、

・「一緒に仕事ができてうれしく思うよ(光栄だ)」(相手に対する思いを伝える)
・「最後まで諦めずによくやりぬいたね、お疲れさま」(労う)
・「早く正確なデータを上げてくれて助かった」(感謝)

という具合に、何に対してどういう気持ちを感じたのかを伝えることが大切です。プロセスに注目したり、上司自身の思いを伝えることによって、部下自身が「役に立った」「自分自身や過程を認めてもらえた(理解してもらえた)」と思えるように、具体的に関わることが重要なのです。

共に喜ぶ姿勢が、伝わるとよいですね。

また、こんな場合の声掛けはどうしたらよいでしょうか。

■部下が間違った方法で取り組もうとしていて、このままだとトラブルになりそうな事案を目にしたとき

リスク回避のために、「そんなやり方じゃダメ」「考えればわかるだろう!」など、ダメ出しをしたり、叱ったりしていませんか。

リスク回避の叱咤は「指示待ち」体質に陥る

先回りして失敗を防ぐことは、自主性を育てる観点からするとマイナスです。なぜなら、ダメ出しをされると、「最初からそう言ってくれよ」「初めからやり方を教えてくれればいいのに」という思いが芽生えてしまいがちだからです。どうせ後でダメ出しされるならと、「指示待ち」体質が育ってしまう可能性があります。ですから、緊急の案件を除き、考えてもらうことを前提とした関わりを持ちましょう。

「どうしようと思っているか説明してもらえる?」「ここに気をつけるといいと思うのだけど、どんなやり方がいいと思う?」といった具合に、主観伝達と質問をすることで、自主性を促すことが望まれます。

人間誰しも、成長欲求を持っています。そのためには、自主性が育まれるようにアプローチすることが何よりも大切です。

・考えてもらうための声掛けや、選択を促す質問
・期待しているといった励ましや喜びなど、プラスの感情の表現
・プロセスに対する認識があること(上司に過程をわかってもらえていることが重要)を伝える

このような声掛けを積極的に行っていくことで、押し付けられ感のない指導に結び付いていきます。

この春からは、「褒める」と「叱る」をやめて、自主性を育てるための声掛けを実践してみませんか。

大野 萌子 日本メンタルアップ支援機構 代表理事

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おおの もえこ / Moeko Ohno

法政大学卒。一般社団法人日本メンタルアップ支援機構(メンタルアップマネージャ資格認定機関)代表理事、産業カウンセラー、2級キャリアコンサルティング技能士。企業内健康管理室カウンセラーとしての長年の現場経験を生かした、人間関係改善に必須のコミュニケーション、ストレスマネジメントなどの分野を得意とする。現在は防衛省、文部科学省などの官公庁をはじめ、大手企業、大学、医療機関などで年間120件以上の講演・研修を行い、机上の空論ではない「生きたメンタルヘルス対策」を提供している。著書に『よけいなひと言を好かれるセリフに変える言いかえ図鑑』(サンマーク出版)がある。

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