9割の悪事を「教養がない凡人」が起こすワケ

歴史と哲学が教える「悪の陳腐さ」の恐怖 

ごく普通の人こそ、「悪」となりうるのです(写真:republica/iStock)
『武器になる哲学』の著者で、哲学科出身の外資系コンサルタントという異色の経歴を持つ山口周さん。ビジネスパーソンにとって哲学を学ぶことは、仕事における「悪」とどう向き合うかを考えるときにも、大きな示唆があるといいます。

二度と悲劇を起こさないために

筆者が、ビジネスパーソンが哲学を学ぶべきと考える理由はいくつかありますが、なかでも重要だと感じるのが「二度と悲劇を起こさないために」というものです。

残念ながら、私たちの過去の歴史は、これほどまでに人間は邪悪になれるのだろうか、という悲劇によって真っ赤に血塗られています。そして、過去の多くの哲学者は、同時代の悲劇を目にするたびに、私たち人間の愚かさを告発し、そのような悲劇が二度と繰り返されないために、どうそれを克服するべきかを考え、話し、書いてきました。

一般的な実務に携わっているビジネスパーソンは、それらに耳を傾ける必要があります。なぜなら、教室の中にいる哲学者が世界を動かすことはないからです。サルトルやマルクスがかつて発揮した影響力を考えれば、この指摘に違和感を覚える人は多いでしょう。しかし事実です。世界を動かしているのはそういった人たちではなく、実際に実務に携わって日々の生業に精を出している、つまり今この文章を読んでいる皆さんのような人たちなのです。

世界史的な悲劇の主人公はヒトラーでもポル・ポトでもありません。そのようなリーダーに付き従っていくことを選んだ、ごくごく「普通の人々」です。だからこそ、私たちのような「普通の人」が学ぶことに、大きな意味があるのです。

特に実務家と呼ばれる人は、個人の体験を通じて得た狭い知識に基づいて世界像を描くことが多いものです。しかし今日、このような自己流の世界像を抱いた人々によって、さまざまな問題が起きていることを見逃すことはできません。ジョン・メイナード・ケインズは、著書『雇用・利子および貨幣の一般理論』において、誤った自己流理論を振りかざして悦に入っている実務家について、次のように記しています。

知的影響から自由なつもりの実務屋は、たいがいどこかの破綻した経済学者の奴隷です。

実に辛辣な指摘です。

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