東北を救う?「国際リニアコライダー」とは何か

次世代科学技術への戦略投資が超重要な理由

ジュネーブ近郊のCERN(欧州原子核研究機構)にある円形のLHC(大型ハドロン衝突型加速器)。日本は次世代の科学技術とどう向き合うべきか(写真:AP/アフロ)

3月7日(木)は、「ある重要な決定の締切日」であった。しかるに当日の報道は以下のように割れている。いったいどれが本当なのだろう?

1. 次世代加速器「現時点で誘致せず」 国内建設計画で見解・文科省(時事ドットコム)
2. 次世代加速器ILC 誘致検討へ米欧と意見交換 文科省が見解発表(産経ニュース)
3. 次世代加速器「国際リニアコライダー」誘致 文科省が結論先送り(毎日新聞)

国際リニアコライダーとは何か?

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時事の記事によれば、日本政府は「誘致せず」と意思表示したので、お断りしたと読める。ところが産経ニュースは前向きで、政府は引き続き米欧と意見交換を続けるとしている。毎日新聞は「結論先送り」との評価である。読み比べると、まあ最後の「玉虫色」説がもっとも妥当なように思えてくる。

最初に明らかにしておくべきだと思うのだが、筆者は「ILC100人委員会」 メンバーの1人なので、当プロジェクトは推進すべしとの立場である。しかし政府が、結論先送りに逃げる理由もよく理解できる。本稿では、「科学技術に投資するとはどういうことか?」をあらためて考えてみたい。

まず、ILCこと国際リニアコライダーとは何か。岩手県と宮城県にまたがる北上山地の地下100メートルに全長20キロメートルのトンネルを掘り、次世代加速器を建設する。そこで電子と陽電子を光速に近いスピードで衝突させると、宇宙の始まりである「ビッグバン」のような状況を人工的に出現させることができる。そうやって「今から137億年前に、宇宙が誕生した謎を解き明かしましょう」、という国際的な共同研究である。

こうした研究は、これまで欧州のCERN(欧州原子核研究機構)と呼ばれるジュネーブ近郊の研究所で行われてきた。こちらにはLHC(ラージ・ハドロン・コライダー)という周長27キロメートルの円形加速器があって、2012年には物質に質量を与えるという「ヒッグズ粒子」が発見されたことで知られている。ただし円形のLHCによる実験には限界があって、次のステージでは線形の加速器を作る必要がある。そこで候補地探しが始まり、日本にお鉢が回ってきたという次第である。

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