吉野家580円定食で考える仕事の「潮目」 潮目がわかる人、わからない人

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世界的な寒波に襲われて、街を歩く人々が厚着になってきました。そんな年末、景気回復の気配を感じることが増えてきました。ひとつは外食業界のニュース。

「高価格」路線も模索…安売り競争で疲弊(毎日新聞)

景気回復の手応えを感じた外食チェーン各社が、客単価を引き上げ、収益改善を図り始めたという内容です。中でも注目したのが、牛丼チェーンの吉野家の取り組み。店内メニューで「牛すき鍋膳」を580円という、吉野家としては高い価格で販売を開始したそうです。

安値の限界から、高級メニューへ

安値の限界に挑戦してきた牛丼とは対照的に、高級メニューで攻めに転じた、というのは象徴的な出来事です。ちなみに、当方が食欲旺盛であった20代の頃(1990年代)は、並盛の価格は400円。「早い、安い、うまい」と3拍子そろったメニューとして頻繁に食べたものでした。ただ当時、“激安”とまでの感覚は持っていませんでした。

ところが、現在の並盛はたったの280円。過去20年間で、世帯平均年収の下落値を超えるプライスダウンを敢行しています(余談ですが、プライスダウンは和製英語で、正しい英語ではディスカウント:discount)。

ここまでの値下げができたのは、想像を絶する企業努力があったからに違いないでしょう。日本経済のデフレ期に耐え忍んできた結果と想像されます。しかも、この価格破壊とも言える280円に値下げが行われたのは今年のことです。

ちなみに、高単価580円の牛すき鍋膳は、旅館の夕飯に登場するメニューのように、牛肉、ネギ、豆腐などの具材を鍋で温めながら食べる商品。ワクワク感があって、コストパフォーマンスが高いと評判を呼んでいるようです。実際、吉野家に入って昼食をしているときに、牛すき鍋膳を注文するサラリーマンに遭遇。

「普段は並盛だけど、今日は贅沢に注文してみた」

と職場の同僚らしき人と話す姿に、「財布のヒモが緩みつつある」明るい未来を垣間見た気がしました。

さらに、牛丼以外でもファミリーレストランなどでも、高価格なメニューが次々と登場しています。企業サイドが戦略を攻めに転じたことを実感します。

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