たとえば、ロイヤルホールディングスが運営するロイヤルホストは、11カ月連続で既存店売上高がプラスで推移していますが、それを牽引するのは“プチ贅沢”とも言える2000円近いステーキメニュー「熟成ロイヤルアンガスリブロースステーキ」。30日以上寝かせた「長期熟成肉」を使用、調理にも手間をかけています。
このステーキ以外でも高価格路線のメニュー改定で、客単価は1040円から過去最高の1170円まで上昇しています。低価格路線のほかのレストランチェーンに比べて、ロイヤルホストは割高感を持たれて苦戦が続いてきましたが、いよいよ高価格路線に消費者需要が合致し始めたようです。
やたら「アップサイド」と口にする人々
さて、こうした攻めの姿勢をとるのは、外食業界の企業だけではありません。
・新規事業の投資予算を大幅増加
・新卒採用の予定人数を上方修正
などと、1年前では考えられない戦略変更を経営陣が発表している企業が多くあります。これは、会社の近い未来の業績に対して、上昇余地を期待できるようになったからに違いありません。当たり前ですが、来年度以降の事業計画がマイナス予測であれば、攻めの戦略を立てるのは無理。売り上げ、利益が伸びると確信が持てるからの決断といえます。
こうした上昇余地を、意欲的に攻める姿勢として
《アップサイドを取りに行く》
と金融業界の用語を口にする人が増えています。たとえば、利益を得る可能性をアップサイドリスク、損失を被る可能性をダウンサイドリスクと呼び、一般的には
《株式市場は依然としてアップサイドリスクが大きいとの見方。米景気指標が依然として堅調なため》
といった使い方をしますが、金融業界以外の職場でも、
「アップサイド(伸びしろ)のある会社であれば、積極的なビジネスを仕掛けるべき時期」
などと、会話上で聞くようになりました。まさに会社側の変化、潮目が変わってきた証しではないでしょうか。
潮目とは、速さの違う潮の流れがぶつかり合う場所のことを言います。漁業的には好漁場のこと。また、情勢が変化するその境目。最近であれば「五輪で日本経済の潮目が変わる」などと用いられます。
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