中国全人代が開幕、「GDP倍増」は実現できるか 米中貿易摩擦受け、目立つアメリカへの配慮
3月5日午前、中国・北京市で全国人民代表大会(全人代、国会に相当)が開幕した。会期は3月15日午前まで。習近平国家主席の「任期撤廃」という大テーマがあった昨年は15日間にわたって続いた。今年は通常モードに戻ったことになる。
しかし、今年は昨年より平穏な環境なのかといえば、むしろ逆だ。3月下旬にはアメリカのトランプ大統領との首脳会談で、習近平主席は米中貿易摩擦を軟着陸させなければならない。今回の全人代では外資系企業への技術移転強制の禁止などを盛り込んだ「外商投資法」を成立させるが、そうした手土産によってトランプ政権との妥協を狙う。
日本時間の10時過ぎから政府活動報告を行った李克強首相は、1時間半あまりの演説の途中でしきりに汗をぬぐっていた。昨年は緊張のせいか、原稿の「読み飛ばし」が指摘されたが、今年は気負いがあったのか拍手が鳴りやまない中で演説を再開しようとしてつっかえる場面がたびたび見受けられた。
2019年の成長率は6.0~6.5%が目標
中国では景気が急速に冷え込む気配を見せている。経済の先行きを示す製造業PMI(購買担当者景気指数)は昨年12月に49.4と、11月の50.0から大幅に低下した。これは業況の良しあしを判断する分かれ目となる50を割り込んだだけでなく、2016年2月以来の低水準だ。2019年に米中貿易摩擦の影響が顕在化する前触れと受け取られ、世界の株式市場に衝撃を与えた。製造業PMIは1月には49.5と持ち直したが、2月には49.2とさらに低下。3カ月連続で50を下回って推移している。
それだけに、全人代で経済政策がどのように打ち出されるかは、世界の市場関係者にとって注目の的となっている。李首相は政府活動報告のなかで「今年は新中国成立70周年で、小康社会をつくるうえでカギとなる年だ」と述べたうえで、2019年の経済成長率を6.0~6.5%に設定すると発表した。「小康社会」とは「ややゆとりある社会」という意味で、2020年にそれを実現するというのが中国の国家目標だ。具体的には2020年のGDP(国内総生産)を2010年比で2倍にすることを目指している。
昨年は「6.5%前後」という目標に対して6.6%で着地しており、水準を一段と下げた。全人代に先立って発表された地方政府の計画では、2019年の目標が北京市で6.0~6.5%(前年実績6.6%)、上海市6.0~6.5%(同6.6%)、広東省6.0~6.5%(同6.8%)という具合に設定されている。全国の数値もほぼ事前予想に沿った内容だった。
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