トランプの貿易戦争で「マッチポンプ」は続く 2020年まで中国への攻撃はやめない
注目された米中首脳会談はとりあえず無難な着地を見た。すでにアメリカは対中輸入2500億ドルに追加関税を課しており、このうち500億ドルが25%、2000億ドルが10%という状況にあった。この点、ドナルド・トランプ政権は後者の2000億ドルに関し年明け以降、税率を25%へ引き上げることを宣言しており、今回の会談はその取り扱いを議論するという位置づけだった。
既報の通り、会談の結果、アメリカは中国の構造改革実施を条件に、関税の引き上げについて最大90日間の猶予を設けるとした。ちなみにアメリカが構造改革が必要だとして問題視しているのは、①中国による技術移転の強要、②知的財産権が保護されていないこと、③非関税障壁の存在、④中国によるサイバー攻撃、⑤サービスや農業分野の市場閉鎖性とされたが、後述するように中国はこうした具体的分野にも、また「90日間」という期限にも言質を与えていない。
「休戦」だがどちらも譲る気配はない
もちろん、中国が何も差し出さなかったわけではない。貿易不均衡是正にあたっては、米国の農産品やエネルギー、工業製品などを「大量に購入する」としており、しかも農産品輸入は「直ちに開始」と言明したことなどが、トランプ政権をなだめた可能性はある。だが、アメリカ側が最も強く求めているポイントは「具体的な構造改革の進捗」であり、「農産品を購入するので追加関税は控える」という矮小化された話にはなるまい。
また、米中覇権争い最大の火種とされる、補助金を投じて自国の重要産業を育成する「中国製造2025」計画についても中国側が見直し方針を発表しているわけではない。メディアのヘッドラインは全体的にアメリカ側の主張を報じているが、中国側の主張も合わせ見れば、交渉が進展する予感はあまりしない。
ちなみに今から90日後には例年3月に開かれる中国全国人民代表大会(全人代)が控えている。それだけに「協議決裂による国内経済への打撃は回避するはず」との目算がトランプ政権にはあるのかもしれないが、面子を重んじる中国がそのような重要な時期に「アメリカに譲った」という決断を堂々と取れるだろうかという疑問もある。
「90日間の猶予」という結論をめぐっては「一時休戦」という表現が多く見られるが、これには既視感がある。今年5月20日、スティーブン・ムニューシン米財務長官が「中国との貿易戦争を保留にする」と述べ、米中貿易戦争の休戦が好感されたことがあった。しかし、そこからわずか1カ月も経過しないうちに(厳密には6月15日に)トランプ政権は通商法301条を理由とする500億ドルの追加関税を公表し、世界を驚かせた。
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