トランプの貿易戦争で「マッチポンプ」は続く 2020年まで中国への攻撃はやめない

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なお、今回の休戦措置はクリスマス商戦という重要な時期を控えているため、アメリカ側に「自身で回避できる余計なノイズは回避しておこう」というインセンティブが働いた結果、との見方もある。90日間あれば「12月の次の利上げ」を実体経済や金融市場(とりわけ株式市場)が織り込むはずである。その時の状況に鑑みて、攻め手を再考するというのでも十分間に合うと踏んだ可能性はある。冗談ではなく、90日後にまた「30日間の猶予を与えて云々......」という展開もないとは言えないだろう。

こうした「自分で火をつけて自分で消化を演出する」という国際金融市場を巻き来んだ「壮大なマッチポンプ」はおそらく再選を賭けた大統領選挙の行われる2020年までは続くのではないか。ゆえに、不透明感の払拭というフレーズと共に米中貿易戦争が完全に市場から消え失せ、市場心理が改善するような展開も、当面はメインシナリオとしては据えづらいと思われる。

アメリカの実体経済や株価がポイント

今後、仮に、トランプ政権の保護主義が明確に後退するような局面が来るとすれば、それはアメリカの実体経済や株価にはっきりとした腰折れ懸念が及び始めた時であろう。しかし、その際もトランプ大統領はそうした減速に対応するためにスタンスを変えたとは思われたくないはずであり、ほぼ間違いなくFRB(連邦準備制度理事会)への批判を先鋭化し、責任転嫁を図るはずである(もっともFRBに責任がないわけではないが)。

奔放な言動が目立つトランプ大統領だが、それでもたいして支持率が下がらない背景に「堅調な経済」と「高止まりする株価」があることは本人も承知している。トランプ政権の先鋭化する保護主義、とりわけ対中強硬路線を修正するものがあるとすれば、それは首脳会談などの「話し合い」ではなく経済・金融情勢の減速という「目に見える懸念」であろう。この点、10月以降、米株が高値波乱含みの状況となってきたことも、今回の休戦合意に寄与した可能性はある。

※本記事は個人的見解であり、所属組織とは無関係です

唐鎌 大輔 みずほ銀行 チーフマーケット・エコノミスト

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からかま・だいすけ / Daisuke Karakama

2004年慶応義塾大学経済学部卒。JETRO、日本経済研究センター、欧州委員会経済金融総局(ベルギー)を経て2008年よりみずほコーポレート銀行(現みずほ銀行)。著書に『弱い円の正体 仮面の黒字国・日本』(日経BP社、2024年7月)、『「強い円」はどこへ行ったのか』(日経BP社、2022年9月)、『アフター・メルケル 「最強」の次にあるもの』(日経BP社、2021年12月)、『ECB 欧州中央銀行: 組織、戦略から銀行監督まで』(東洋経済新報社、2017年11月)、『欧州リスク: 日本化・円化・日銀化』(東洋経済新報社、2014年7月)、など。TV出演:テレビ東京『モーニングサテライト』など。note「唐鎌Labo」にて今、最も重要と考えるテーマを情報発信中。

※東洋経済オンラインのコラムはあくまでも筆者の見解であり、所属組織とは無関係です。

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