サウジの「汚れた皇太子」を待ち受ける結末

国際社会はカショギ氏死亡の説明に懐疑的

国際社会から厳しい目を向けられているサウジアラビアのムハンマド皇太子(写真:ロイター/Bandar Algaloud/Courtesy of Saudi Royal Court)

サウジアラビア人著名ジャーナリスト、ジャマル・カショギ氏の暗殺疑惑は、サウジアラビアとトルコ双方の主張が食い違って「劇場化」しており、真相究明を求める声は止みそうにない。計画的な殺人だった決定的な証拠があると主張するトルコのエルドアン大統領は、その「証拠」の一部をアメリカ側に提供したとみられ、疑惑は一層深まった。

中東安定の重要な同盟関係や巨額の兵器売却契約への悪影響を気にしてムハンマド皇太子を擁護してきたアメリカのドナルド・トランプ大統領も、二転三転するサウジの説明に皇太子を守りきれなくなりつつある。サルマン国王が皇太子を解任するのではないかとの見方も流れている。

いずれにしても、「暗殺作戦の影の黒幕」というレッテルを貼られたムハンマド皇太子のイメージは失墜。権力の座にとどまれた場合も、皇太子が主導する脱石油を目指す経済改革の失速は避けられそうにない。

トランプ氏も皇太子関与説に傾く

カショギ氏が10月2日に総領事館を出たと一貫して無実を主張してきたサウジアラビア当局は一転、20日になって同氏が殴り合いの末に領事館内で死亡していたと発表。その後もジュベイル外相が「殺人だった」として、けんかによる偶発的な死亡事件との検察当局の捜査結果を覆した。実権を握るムハンマド皇太子の側近ら5人が解任され、関係者18人が逮捕されており、皇太子の関与を疑う国際的な世論は高まるばかりだ。

その後も、米中央情報局(CIA)のハスペル長官が、トルコが持つ証拠の1つであるカショギ氏が拷問、殺害された際の音声データを聴いたと報じられた。これを受け、サウジ検察当局は25日、容疑者たちが事前に犯行を計画していたとし、殴り合いの末の死亡との前回発表を撤回した。

トルコ側がメディアにリークした情報によれば、カショギ氏が死亡した当日、暗殺団とされる法医学者や情報機関員、軍人、皇太子の警護役ら15人が現地入りし、その日のうちに出国。解任された5人には、王室顧問だったサウド・カハタニ氏と情報機関高官だったアハメド・アシリ氏が含まれている。

サウジアラビア政府はアシリ氏らが15人を選定し、一部が暴走した結果、誤ってカショギ氏を死に至らせたとの筋書きを国際社会に示している。だが、ムハンマド皇太子が主導するサウジアラビアの強権支配の実態もあり、アメリカのワシントン・ポスト紙にコラムを持っていた影響力のあるカショギ氏を口封じのために暗殺したとの疑惑は晴れない。

ヨーロッパ各国政府やカナダは、サウジアラビア検察の捜査結果に対して、真相究明を求めた徹底捜査を要求。ドイツのように事実が解明されるまでサウジへの武器輸出を停止すると踏み込んだ国もある。サウジアラビア検察の発表を信用するとしていたトランプ大統領も、24日付のウォール・ストリート・ジャーナル紙のインタビューで、サウジアラビアを事実上統治しているのはムハンマド皇太子だと指摘し、「もし誰かが関与しているとすれば、彼になる」と、皇太子の関与説に傾いた。

暗殺疑惑は、中東の不安定化や原油供給不安につながりかねない外交分野への影響に止まらない。

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