サウジの「汚れた皇太子」を待ち受ける結末 国際社会はカショギ氏死亡の説明に懐疑的

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サウジアラビアの首都リヤドで23日から25日までの日程で開催されている「砂漠のダボス会議」と呼ばれる国際経済フォーラム「未来投資イニシアチブ」では、アメリカのムニューシン財務長官や国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事ら政府や国際機関の要人が欠席、ゴールドマン・サックス幹部や三菱UFJ銀行の三毛兼承頭取ら大手企業経営者にもボイコットの動きが広がった。

ある関係者は「コンプライアンス(法令遵守)が厳しく問われる時代、暗殺への関与が疑われる国家指導者が主催する会議に出席すれば、企業倫理が問われかねない」と、企業の不参加が相次いだ理由を解説する。

脱石油を目指すサウジアラビアは、2030年を目標とする包括的な経済改革「ビジョン2030」を進めているが、必要とされるのは莫大な金と海外の技術だ。だが、暗殺疑惑を持たれるようなサウジアラビアに積極的に投資しようという機運はしぼみかねない。

国内で皇太子人気が低迷するおそれも

すでに改革の先行きを不安視させるような気配はあった。今年夏には、改革での資金調達の柱となる予定だった国営石油会社サウジアラムコの新規株式公開(IPO)が中止され、推計約1000億ドル(11兆円)の原資が消えたのだ。ムハンマド皇太子は昨年秋、批判的な王族や財界有力者らを一斉に拘束したが、反対勢力の不満は強まっている。アラムコのIPO中止でも、既得権益を失う王族らの反対があったといわれる。

サウジアラビアは、「アラブの春」を受けた民衆の不満の高まりに対応して、補助金を拡大したり、公務員給与を引き上げたりした。しかし、こうした大盤振る舞いはいつまでも続かない。人口の増加で国内での石油消費量は伸びており、将来的には輸出に回す分が減っていく公算が大きい。

変動する石油価格によっては財政赤字が一気に拡大しかねず、現在は金や改革期待によって、若年層を中心に支持をつなぎ止めているムハンマド皇太子の国内的な人気もしぼむおそれがある。

ムハンマド皇太子は毀誉褒貶の多い指導者だ。年功序列の人事を行ってきたサウジアラビアで、その指導力を見いだしたサルマン国王によって若くして登用されたが、経験不足は否めない。女性の自動車運転解禁や映画館解禁などを主導して皇太子は改革派との呼び声が高いが、野心的なビジョン2030は実のところ、アメリカのコンサルタント会社マッキンゼーの報告書を下敷きにしたものだ。

サウジアラビア政府は、欧米のPR会社やコンサルタント会社に何百億円も支払ってイメージアップ戦略を行っており、皇太子の経験不足と強権的な気質を、欧米のコンサルタントが改革という名の化粧で飾り立てているという実態も透けて見える。

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