サウジの「汚れた皇太子」を待ち受ける結末

国際社会はカショギ氏死亡の説明に懐疑的

こうしたイメージ先行のサウジは、ムハンマド皇太子が実権を握るようになって以降、強引な外交や政策が目立つ。

イエメンへの軍事介入は「最悪の人道危機」と言われ、独自外交を行ったカタールとの断交は思ったような効果を上げず、レバノンのハリリ首相に対する辞任の強要も失敗に終わった。人権問題に注文を付けられた腹いせに外交関係を格下げしたカナダ政府からは、逆に今回の暗殺疑惑で強い非難を浴びている。

「皇太子の改革は終わったも同然」

単独インタビューするなどムハンマド皇太子の改革路線を支持してきたアメリカのニューヨーク・タイムズ紙のコラムニスト、トマス・フリードマン氏は16日付のコラムで、「皇太子が約束した改革は終わったのも同然だ」と切り捨てた。そのうえで、「ムハンマド皇太子は権力の座にしがみつくことはできるかもしれないが、改革は海外からの投資を必要とする中、サウジアラビアから資金は流出を続け、今はそれが加速している」と改革の先行きを危ぶんだ。

皇太子を擁護してきたトランプ大統領の発言にも変化が見える。トランプ氏は23日、ホワイトハウスで記者団に「史上最悪の隠蔽(いんぺい)が行われた」と語り、サウジアラビア批判のトーンを強めた。

アメリカの政界では、ムハンマド皇太子という不安定で強権的な指導者に、世界最大級の産油国であるサウジの舵取りをこのまま任せていいのか、とムハンマド皇太子と強固な関係を築いてきたトランプ氏の判断にも批判の矛先が向かっている。ムハンマド皇太子を切り捨て、ほかの指導者を推すべきではないのかとの声も出ているのだ。

アメリカよりも人権意識の高いヨーロッパでも、ムハンマド皇太子に対する批判が強まっている。イギリス人ジャーナリストのデビッド・ハースト氏は論説記事で「カショギ氏の野蛮な殺人者によって生み出された危機を乗り切る唯一の方法は、サルマン国王が新たな王位継承者を探し出すことだ」と書き、国王がムハンマド皇太子を解任しない限り、事態の収束は困難との見方を示した。

サウジアラビアの将来の国王を決めるのはサウジアラビアの主権に属することだが、このままムハンマド皇太子の責任を問わず、若き皇太子が王位を継承することになれば、世界は傲慢で乱暴なサウジアラビアと長年にわたって付き合い続ける必要が生じてしまうとの懸念が台頭している。

サウジアラビア国内でも、ムハンマド皇太子の失策を受け、反対勢力との権力暗闘が激化しており、サウジアラビアが内紛で混乱に陥るおそれもある。すでに欧米のメディアでは、ムハンマド皇太子に代わる王位継承者探しが始まっており、ムハンマド皇太子の弟で、現・駐米大使のハリド・サルマン王子のほか、ムハンマド・ナエフ前・皇太子、ナエフ氏の皇太子解任に反対したアフメド・ビン・アブドルアジズ元・内相らの名前が挙がっている。

ムハンマド皇太子は、この窮地を乗り切れるのだろうか。

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