「米中戦争」で妥協したいのはトランプの方だ

それでも弱い中国との「戦争」を選択するのか

今度はトランプ大統領とペンス副大統領の「不仲説」まで出てきたアメリカ。筆者は「米中貿易戦争で妥協を図りたいのはむしろトランプ大統領」と見る(写真:AP/アフロ)

あまり知られていないが、アメリカはイギリスと2度戦争をしている。1度目は1775年に始まった独立戦争でこれはよく知られている。では2度目は? いわゆる1812年の戦争だ。

1812年の米英戦争は今の米中貿易戦争と似ている?

1812年の戦争の発端は、アメリカとフランスとの貿易を快く思わないイギリスが、フランスに向かうアメリカ船舶を拿捕したことに始まる。独立したとはいえ、「よちよち歩き」だったアメリカは、イギリスに方針を変えるように懇願した。だがナポレオン・ボナパルトと戦争をしているイギリスは聞き入れなかった。

この時、アンチフェデラリスト(各州の独立性を主張する党派)だったトーマス・ジェファーソン大統領(第3代大統領)は仕方なく、1807年にフランスだけでなくイギリスを含めてすべての輸出を禁止した。「輸出が止まれば自分たちのアメリカも困る。だがアメリカからモノが入らなければ、戦争中のイギリスはもっと困るはずだ」と考えた。

現代の米中貿易戦争を彷彿させるような展開だが、ジェファーソンの読みが正しければ、イギリスが妥協することで決着がつくはずだった。ところが、イギリス議会が戦争回避へ転換を決めたにもかかわらず、1812年の戦争は勃発してしまったのである。理由は、当時は大西洋を渡る情報伝達には数カ月かかり、イギリスの方針転換を知らないジェームズ・マディソン大統領(第4代大統領)率いるアメリカ議会が、イギリスに対し宣戦布告をしてしまったからだ。

実際に戦争が始まると、前大統領ジェファーソンの読みは間違っていたことが判明した。貿易がなくなり疲弊したのは、イギリスよりもアメリカだったのである。物量に乏しいアメリカは苦戦を強いられ、現在のホワイトハウスにあたる政権中枢はイギリス軍の攻撃で陥落した。しかし、ここからカムバックするのがアメリカである。最後はアンドリュー・ジャクソン(のちの第7代大統領)が南部のニューオーリンズの戦いでイギリス軍を破り、1812年の戦争は痛み分けで終わった。

次ページトランプは米中貿易戦争どころではない
マーケットの人気記事
トピックボードAD
関連記事
  • 逆境からの人々
  • 西村直人の乗り物見聞録
  • 新競馬好きエコノミストの市場深読み劇場
  • 仲人はミタ-婚活現場からのリアルボイス-
トレンドライブラリーAD
人気の動画
スバリスト、トヨタ購入者とまったく異なる嗜好
スバリスト、トヨタ購入者とまったく異なる嗜好
築40年超「老朽マンション」丸ごと建て替えの大問題
築40年超「老朽マンション」丸ごと建て替えの大問題
「料理が突然、上手になる」たった1つの簡単秘訣
「料理が突然、上手になる」たった1つの簡単秘訣
AOKI、コロナ禍で売れた「パジャマスーツ」で描く復活戦略の要諦
AOKI、コロナ禍で売れた「パジャマスーツ」で描く復活戦略の要諦
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
トレンドウォッチAD
持たざる国・日本に大激震<br>エネルギー危機が来る

脱炭素の移行期に化石燃料の争奪戦が勃発。天然ガスの価格は歴史的な急騰を記録しました。余波はサプライチェーンの混乱から世界経済の後退懸念、原発待望論まで広がります。資源小国の日本が生き残る道はあるのでしょうか。

東洋経済education×ICT