「米中戦争」で妥協したいのはトランプの方だ それでも弱い中国との「戦争」を選択するのか

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この戦争をきっかけに、アンドリュー・ジャクソンはアメリカの白人男性の英雄になり、前出のようにそのままのちの大統領になったが、今ジャクソンの肖像画を自室に掲げるドナルド・トランプ大統領は、11月末のG20で中国の習近平国家主席との貿易協議に臨む。

著名な株式コメンテーターのジム・クレーマー氏は「今の株式市場は隠れる場所がない」と嘆くが、なにやらゆっくりとしたメルトダウンが始まった株式市場は、G20でのこの米中首脳会談に希望を託している。だが、こちらからみて、今のトランプ大統領は米中貿易戦争どころではない。中間選挙の敗戦処理に追われているからだ。

トランプ大統領に待ち受ける「いばらの道」

まず、中間選挙当日は上院で負けなかった共和党に対しては「勝負には勝った」との解説が横行した。だが実際には共和党の敗北が明らかになりつつある。

たとえばカリフォルニア州のオレンジ群の下院選では、1930年代の民主党のフランクリン・ルーズベルト大統領誕生以来となる、共和党候補の全滅。全米規模で見れば、中間選挙当日は結果が出なかった10以上の下院の議席が民主党へ。そして、11月27日に決戦投票が控えるミシシッピー州での上院議席を失うと、優位だったはずの上院選挙でも共和党は勝ち切ったとはいえなくなる。

それでも、上院の獲得投票総数を考慮すれば(民主党57%、共和党41%の大差)、これで上院を失わなかったことについて、トランプ大統領個人の戦略は評価されていい。

ただし今後を予想すると、共和党とトランプ大統領にはいばらの道が待っている。最大は、今回は史上初めて総額で5000億円を超えた選挙資金で、共和党が民主党に敗北したことだ。民主党は共和党の2倍の資金を集めたが、支えたのはACTBLUEといわれる組織だ。もともとは草の根の組織だったACTBLUEは、2016年の選挙でバーニー・サンダース躍進の原動力になり、今回はスポンサーとして、大手ヘッジファンド出身のトム・スタイヤー氏などの「1000億円長者」が加わった。

下院を失ったトランプ大統領は、今後、司法当局より民主党が委員長を出す複数の下院委員会によって過去の自分たちのビジネスとロシアやサウジアラビアの関係を掘り起こされる。それをこれまで以上にCNNなどの主要メディアが取り上げた。

その背後には、今回、前出のようなアクティビストたちを応援したスタイヤー氏と、ずっと穏健派のリベラルの活動全般を支えてきたジョージ・ソロス氏に加え、なんといっても、共和党を私物化したトランプ大統領の敵として、共和党主流派のパトロンだったコーク兄弟(総合資源会社コークインダストリーズの所有者)の資金が加わる。

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