会社から「アイデアを否定され続ける人」の弱点 「自分のやりたいこと」を実現するための教え
ただ、ここで注意しなければいけないことがあります。それは、いくらいいアイデアであっても、新しいアイデアを形にするには「時間」と「労力」がかかる、ということです。当たり前のことのようですが、このことについての一般的なイメージと現実との間の落差は意外に深い溝となって横たわっています。それこそ、成功する人とそうでない人を分ける境界線になっているように感じるのです。
成功には時間がかかる
世の中には、「成功者が語るサクセスストーリー」があふれています。そこでは、革新的なアイデアを思いついた瞬間や、出来上がったサービスや商品が大成功したその後のシーンばかりがクロースアップされます。そのためか、多くの人が、思いついたアイデアをまとめ、形にしていくまでには多大な時間と労力がかかるということを忘れてしまいがちです。
アイデアが革新的で、前例のないものであればあるほど、それを形にするには、時間と労力がかかります。裏を返せば、どんなすばらしいアイデアであっても、それを形にしていくプロセスが頓挫してしまえば、この世に実現することはなく、そういったケースはきわめて多いということなのです。実際、そうやって「形にならなかったすばらしいアイデア」は、無数にあるはずです。
だからこそ、僕は「アイデアを形にするための時間と労力」に着目すべきだと思います。今は時代の変化のスピードが非常に早くなっていると言われますが、「革新的なアイデアを形にするためにかかる時間と労力」というのは、実は今も昔も、そう変わりません。例えば医療の世界では、1つの新薬が開発され、病院で使われるようになるまで、ある生理学的な発見が実際の治療に生かされるようになるまでは、今でも10年、場合によっては何十年もかかるのが当たり前です。あるアイデアを形にするのに、比喩ではなく「人生のすべて」を費やしている人だってたくさんおられます。
「新しいアイデアを形にする」とか「誰もがやってこなかったこと」にチャレンジするということには、華やかで、キラキラとしたイメージがあります。しかし実際には、その「チャレンジ」という仕事の内実は、普通の毎日の中で何気ない気づきを繰り返す、必要なプロセスだということ。うまく枠組みで捉えることのできないほど地味で孤独な時間の集積であるということは、効率だけが現実であるかのような単純な価値観が叫ばれる現代においては、一応覚え書きしておいたほうがいいと思います。
自分だけのアイデアを育てて形にしていくためには、長い「助走期間」が欠かせません。では、この「助走期間」を、私たちはどのような心構えで過ごしていけばいいのでしょうか? 読者の皆さんの多くは会社勤めをされていると思いますが、誤解を恐れずに申し上げておくと、組織というものはそもそも、程度の差こそあれ、新しいアイデアを拒む傾向があります。歴史のある会社や、規模がある程度以上大きくなった会社では、しばしば「新しいチャレンジを拒む風土」が生まれがちです。
だから、会社勤めをしている人の中には「今の組織にいたままでは、新しいアイデアを形にすることは難しい」「チャレンジをするなら、独立して、起業しないといけない」と感じることが少なくありません。
こうした考えは、半分正解で、半分間違いだと私は思います。