ジョイフル本田「千葉店大改装」の思わぬ大誤算 「超大型ホームセンター」は生き残れるのか

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東洋経済の取材に対し、矢口社長は「千葉店はもともとあった建物を取り壊して、まったく新しい挑戦をした店舗。その結果、既存のお客さんが持っていた店のイメージと離れてしまった」と説明する。改装前は、近隣に住む高齢の客による水や酒、米、ガソリンなどの生活必需品の買い物が中心だったが、こうした利益率の低い商材の販売を大幅に縮小。代わりに若いファミリー層向けのペットやガーデニング売り場、プロ業者向けの資材などを拡充したが、既存の顧客層が大きく離れてしまった。建築コストの高騰により改装の投資額が想定以上に膨らんだこともあり、巨額の減損を計上した。

「千葉店は既存のお客さんが持つ店舗のイメージと離れてしまった」と話すジョイフル本田の矢口幸夫社長(撮影:尾形文繁)

もっとも減損はあくまで会計上の損失でありキャッシュアウトは伴わない。減損を計上しても十分に最終利益の黒字を維持できており、全体の業績に与える影響は深刻とは言えない。ただ、同社の今後の成長を占ううえでも、千葉店の業績が早期に回復に向かうかどうかが重要になる。

ホームセンター業界は近年、ニトリなどの専門店やドラッグストア、ネット通販などが台頭し、市場規模は4兆円で頭打ちとなっている。一方、カインズやDCMホールディングスなど大手を中心に出店が続き、1店舗当たりの売上高が落ち続けるオーバーストア化が進んでいる。広域商圏から集客するジョイフル本田の大型店舗は競合から客を取られる立場にあり、同社は既存店客数の減少に悩まされていた。

中型店舗モデルで巻き返し

建築コストも上昇する中、これまでのような2年に1度のペースで大型店を出店するのは困難になっている。そのため、同社はペットやガーデニングなどホームセンターが強みを持つ分野を強化した3000坪弱の中型店舗モデルを確立し、人口密度の高い東京や神奈川など都心部に進出する戦略を掲げていた。千葉店のリニューアルにはそのモデル店舗を構築するための”実験店”としての位置づけがあった。

「より高齢化が進む10年先を考えたら、客層のメインターゲットを低い年齢層においておかないといけない。千葉店はなんとか客層の中心を変えていこうとチャレンジしたお店。比較的若いファミリー層の取り込みは成功しているので、高齢層のお客さんにも戻っていただく施策を打つ」(矢口社長)

酒や水など既存顧客のニーズが強い商品の販売を一部再開するほか、人員の再配置やオペレーション改善などの修正を進めている。「(減損を計上したことで)今後の減価償却費は軽くなった。売り場やオペレーションの見直しをはかり、千葉店は早期に単店黒字化を目指したい。そして大型店と中型店を交えて2年に1店程度のペースで出店していく」(矢口社長)。

地方での人口減少が加速する中、高齢層の既存客維持と若い客層の新規開拓をいかに両立するかは深い悩みだ。高い授業料を払った千葉店の経験を活かし、攻めの出店に転じられなければ、ジョイフル本田の成長は難しくなるだろう。

秦 卓弥 東洋経済 記者

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はた たくや / Takuya Hata

流通、石油、総合商社などの産業担当記者を経て、2016年から『週刊東洋経済』編集部。「ザ・商社 次の一手」、「中国VS.日本 50番勝負」などの大型特集を手掛ける。19年から『会社四季報 プロ500』副編集長。21年から再び『週刊東洋経済』編集部。24年から8年振りの記者職に復帰、現在は自動車・重工業界を担当。アジア、マーケット、エネルギーに関心。

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