日本高野連が待った、「球数制限」議論は進むか 新潟県高野連が導入予定も、再考を要請した

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1月27日、兵庫県神戸市のアシックス本社体育館で行われた「第3回神戸野球肘検診」の様子(筆者撮影)

日本高野連は2月20日に大阪市内で開かれた理事会で、新潟県高野連が今春の新潟県大会での導入を目指していた投手の球数制限について、再考を求めることを決めた。日本高野連側からの要望となり、強制力はない。新潟県高野連の決定次第となる。

今後、4月には専門家を交えた「投手の障害予防に関する有識者会議」を発足し、検討を始めるとした。この有識者には医師などの専門家、高校野球での指導経験がある監督などが含まれる。

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予想されていた結論ではあるが、関係者の間では失望感が広がっている。

「有識者会議」の発足を決めたのは半歩前進という見方もあるが、選手の健康を守るうえでほとんど効果が期待できない「タイブレーク制」でさえも、議論が起こった2013年から甲子園に導入するまでに5年もかかった。

はるかに大きな影響を与える「球数制限」の議論を、今から始めれば、導入はいったいいつになるのだろうか?

「球数制限」見送りの根拠

なぜ「球数制限」の議論が、ここまで進まないのか?

筆者の見るところ、推進派と反対派あるいは慎重派が、同じ議論をするためのテーブルについてこなかったと考えられる。

日本高野連は、慎重論の根拠として「部員不足の連合チームが増加し、各校野球部の部員数に二極化が見られ、部員数が20名以下の加盟校が全体の約4分の1を占める現状では、投球数制限に踏み込むのは慎重であるべき」を挙げている。

確かに現代の高校野球は有力私学に選手が集まる一方で、一部公立高校の選手数は減少の一途をたどり、各県で合同チームが増えている。戦力格差は広がっている。しかし、それを問題視するなら、私学など有力校の部員数に上限を設けるなどして、戦力の均衡を図るべきだ。

日本高野連がその努力をしているのならともかく、戦力格差が広がるのを放置したうえで、「さらに戦力格差が広がるから、『球数制限』はできない」というのは言い訳にすぎない。

「球数制限」があろうとなかろうと、合同チームなど弱小チームは「試合に出るのが精いっぱい」になっているのだ。それを根拠にするのはやや無理がある。

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