会議の席上では「今回のような勝敗に影響を及ぼす規則については全国で足並みをそろえて検討するべきではないか」という意見が出たというが、まさにそれこそが、高野連が「勝利至上主義」にとらわれていることの証左だろう。そもそも「球数制限」は「勝ち負けよりも子どもの健康を優先しよう」という発想から出た改革案なのだ。
さらに、一部の指導者や野球解説者などからは「なぜ100球なのか」とその根拠性を問う声や、「科学的な裏付けがない」という意見も出ている。
「球数制限」は、「多くの球を投げれば、故障のリスクが高まる」という医学的な根拠に基づいている。特に骨や筋肉が発達途上にある10代の少年期に過酷な投球をすると、不可逆的な障害を負う可能性が高まる。だから、球数を厳格に管理すべきだということなのだ。
もちろん「投球過多のリスク」はあくまで「可能性」であり、投げ続けても故障しない投手も少数ながらいる。日本の野球界は、そういう少数の「成功例」があることを根拠に「球数制限は必要なし」と言ってきた。
しかし近年、野球選手の健康障害について多くの症例が集まり、統計的にも「投球過多のリスク」が証明されつつあるのだ。だから、日本を除くほとんどの国の青少年野球で「球数制限」が導入されるようになったのだ。
例えば、アメリカでは、MLBが「ピッチスマート」という厳格な「球数制限」のルールを導入し、野球少年の健康障害の予防に乗り出している。
高校野球の改革が進まない弊害が中学以下にも
高校野球が「球数制限」などの改革に踏み切らないために、中学以下の少年野球でも健康障害は実際に出ている。
筆者は今年に入ってからでも2回、野球少年の「ひじ、肩」の大規模な検診を取材した。
1つは、1月5日の「ぐんま野球フェスタ2019」だ。ここではU12侍ジャパンの仁志敏久監督の指導者向けの野球教室や講演が行われたが、同時に、群馬県の慶友整形外科病院などの医師による野球少年への「エコー検診」が行われた。
このイベントの主催者である慶友整形外科病院整形外科部長・慶友スポーツ医学センター長の古島弘三医師は、野球少年の健康被害について、データを挙げて広く訴えている。
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