さらに1月27日、兵庫県神戸市のアシックス本社体育館で「第3回神戸野球肘検診」が行われた。
この検診でも父母に対して「OCD(肘離断性骨軟骨炎)」の危険性を訴える講演が行われた。
いずれの検診にも数百人の野球少年が受診したが、その中からOCDや靭帯損傷などの健康障害がある子どもが数%見つかっている。これらの被害は、球数制限をしている国ではほとんど見られない。
深刻なのは、被害を受けた子どもの大部分が、チームのエース級の投手だということだ。
将来有望な選手ほど、試合で酷使されるために青少年時代にリスクが高まるのが現状なのだ。
こうした検診の多くは、医師や理学療法士がボランティアで行っている。医療機関で異常を訴える野球少年は非常に多い。
それを見かねて予防的な検診を実施しているのだ。スポーツ医療の現場での危機意識はそれほど高くなっているのだ。
背景には高校野球の独特な文化
ほとんど日本だけで発生している野球少年の健康障害の背景に、高校野球がある。高校野球は球数無制限で、一発勝負のトーナメントで行われる。
昨夏の甲子園を沸かせた金足農の吉田輝星投手のように、地方大会から1517球も投げるような野球が容認されている。そのために高校野球を目指す中学以下の野球も、トーナメント大会で行われ、球数制限もないまま行われているのだ。日本の高校野球の独特の「文化」が、中学以下の少年野球にも強い影響を与えているといえよう。
今年の2月になって全日本軟式野球連盟は、学童野球に「70球」の球数制限を設けることを決定した。この背景には少年軟式野球の競技人口が、激減していることがある。これ以上放置すれば、子どもの健康を気遣う親からますます見放されるという危機感が、高校野球や他の少年野球とはたもとを分かつ決断につながったのだ。
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