しかし、言われたことを正確に素早く対応する仕事は、人間よりもAIのほうが得意。産業構造が大きく変わろうとしている今、企業が若者に求めるのは、積極的に新事業に取り組む起業家精神(いわゆる「アントレプレナーシップ」)であり「課題解決力」だ。そうした力を身に付けた“人財“を育成するためにもPBLが重要な役割を果たしている。
高校ではこのPBL授業がかなり普及してきている。きっかけはセンター試験廃止などでも話題の、大学入試制度改革だ。
2019年度から「ポートフォリオ」という、高校生活の学びや部活動などの記録を提出させ入試判定に活用するシステムの導入が進んでいるが、ここに参画する大学が増えている。この新しいスタイルの入試に対応するために、高校生活の中で「何を学んだのか」を蓄積する必要がある。そのために、ボランティア活動やPBLを授業の中に組み込む高校が増えているのだ。
さらに大学でもPBLの導入が進んでいる。国や文部科学省が探究型の学習を推進しているというのもあるが、産業界からの要望が高い。
経団連が課題探究型学習の拡大を大学に求める
日本経済団体連合会が2018年12月に発表した「今後の採用と大学教育に関する提案」の中で「大学の教育改革」の要求がなされた。その提言の中で、学修活動によって「主体性や説明能力の向上」を図り、「成績は、試験などによる一時的な知識の習得状況や授業への出席率の評価だけではなく、学生がどれだけ主体的に学び、深く考え抜いたかというプロセスや知的作業の結果を評価するものとすべきである」と、PBLの学校現場での浸透を促している。
企業は、「イノベーション」を掲げ新規事業の創出に力を注いでいる。しかし、「言われたことを正確に回答する」ことに慣れてしまっている”人財”では、イノベーションは起こすのは難しい。そうしたことから大学教育にPBLを拡大させ、積極的に課題の解決策を提示できる人材が輩出されることを求めている。採用選考などでの現場でも、課題解決力が評価の軸のひとつになっている。
では、その教育効果はどうか。数年前からPBLに取り組む立命館大学産業社会学部の前田信彦教授は「大学教育で理論を教えることはできますが、それと並行してもっと具体的な経験をさせることが重要ではないかと考えています。その手法としてPBLは効果的」と語る。
PBLを経験した学生が社会に出て成果を出すには、少し時間はかかるかもしれないが、筆者が取り組んでいるプロジェクトの中から、その事例を紹介したい。
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