人前で緊張する人は自分の「期待値」が高すぎる ハードルを下げ、安全ネットを張るのがコツ

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例えば、「あえてひどい言い間違いをしてしまおう!」「全部台無しにしてしまえ!」くらいのことを自分の中でわざと念じながら本番に臨んでみるのも試す価値がある。

筆者が演奏するホルンのようにコントロールの難しい楽器だと「全部ミスしよう!」とわざと思うことが、「ミスしないように」という思考を中和して硬さをほぐし、よりよいパフォーマンスにつながることが頻繁にある。

ただし、「そう考えておきさえすればうまくいく」という打算が働くと、それは実質的に「間違えないようにしよう」という思考と同じであり、効果はない。

わずかなコントロールのちがいで結果が変わるケースで、うまくいくか・うまくいかないかという結果そのものは思い通りにできないだろう。コントロール(技術)そのものへのコミットメントを不十分にしてしまい、むしろ悪い結果の可能性を高めることになる。

最終的にうまくいくかどうか、思い通りにいくかにはつねに不確定要素があり、その真実を受け入れるというのもまた「期待値を下げる」ということだ。

期待値を下げることは手を抜くことではない

「期待値を下げる」ということと「手を抜く」ということを混同してはならない。

期待値を下げるのは「やるべきことに集中するため」の工夫であり、手を抜くためではないからだ。

自分の力量について「暴力的に正直」であることや、結果は最後までわからないという真実を受け入れることも期待値を下げることならば、これは「リアリスト」であろうとすることでもある。

緊張・あがり症の対処法としてポピュラーなものの中には、根拠のない自信や楽観視を育てるものもあり、これも有効かもしれない。だが、四半世紀、あがり症に向き合った筆者にとっては、むしろ現実をできるだけ徹底して受け入れることがベストパフォーマンス発揮のためのキーポイントと考えている。

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