音楽家が「起業家」に変身することはできるか ホルン奏者バジル・クリッツァーの連載第1回

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クラシック音楽の世界における「仕事」とはいったい何か探求していきます(写真:Davizro/iStock)
クラシック音楽の世界において、音楽家の多くはフリーランサー・個人事業主であることはご存じだろうか?
もちろんオーケストラに在籍している音楽家でも、レッスン活動、オーケストラ外での演奏活動、自らが主宰または携わるアンサンブルの事業展開、レコーディングなど「会社外」の活動・副収入を得られる活動が存在する。
一定数のオーケストラ奏者がそのような活動を活発に行っており、基本給の低いオーケストラでは「副収入」のほうが場合によっては大きな金額になっていることもある。
この連載は、主にクラシック音楽そしてジャズ音楽の分野で、自らの仕事を作る「起業家的音楽家」を読者の方々にお見せすることを目指していく。
クラシック音楽やジャズ音楽におけるビジネスは果たして特殊なものなのか、それともあらゆるビジネスやマーケティングの原理が適用される普遍的なものかを探っていく、ホルン奏者バジル・クリッツァー氏の連載第1回。

クラシック音楽・ジャズ音楽という“ニッチ”な市場において、音楽家は浮世離れしてビジネスとはかけ離れたところに生きているイメージが持たれている。彼らはどのようにして「自分の仕事」を確立しているのか。

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その生き様は、音楽家とゆかりもない方々から興味を持っていただけるか、それとも小さく時代遅れで愚かな世界だと思われるのか、音楽の世界の住人である筆者には正直なところまだわからない。

自分自身、音楽以外の世界で生きたことがないからだ。

起業家的音楽家、アンドリュー・ヒッツ氏

アメリカのチューバ奏者 Andrew Hitz (アンドリュー・ヒッツ)氏が展開する”The Entrepreneurial Musician” 直訳すると「起業家的音楽家」というポッドキャストをご存じだろうか? 今連載ではヒッツ氏の協力の下、筆者が日本語に翻訳しながら、クラシック音楽およびジャズ音楽における起業とビジネスの実例を紹介したい。

The Entrepreneurial Musician” = 起業家的音楽家 という切り口でポッドキャストを運営し、コンサルティングやセミナー活動を行うアンドリュー・ヒッツ氏は、チューバ奏者である。

チューバという楽器をご存じであろうか? 

金管楽器のチューバ(写真:Juca / PIXTA)

こんな見た目の楽器である。

チューバとは金管楽器の一種だ。

金管楽器は唇を振動させて音を出す楽器で、トランペット、トロンボーン、ホルンといった楽器もいずれも金管楽器である。

これら金管楽器で構成される5人編成のアンサンブルが「金管5重奏」なのだが、ヒッツ氏は世界的に有名で人気も非常に高い「ボストンブラス」という金管楽器5重奏のメンバーを14年間務め、チューバ奏者としての地位を確立した人物だ。

まずはヒッツ氏自身の演奏をお聴きいただこう。

中央がヒッツ氏

このボストンブラスのメンバーになったきっかけが面白い。ポッドキャスト The Entrepreneurial Musician 第64回より、本人の話を引用しよう。

彼の演奏者としてのキャリアは1本の電話から始まった。 

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