大河「いだてん」からそれでも目が離せない理由 視聴率では測れない「情報洪水」の快感

✎ 1〜 ✎ 16 ✎ 17 ✎ 18 ✎ 最新
拡大
縮小

最後に、テレビとスマホ(ネット)の関係論に戻る。ここ数年のテレビ界は、スマホとの「競争」ではなく、「共存」を図ってきたように思える。その象徴が、ニュース番組などにおける、番組指定のハッシュタグ付きツイートを画面に流す演出だ。

スマホやネットは、テレビの敵としてはもう強大になりすぎた。だとしたら、テレビとスマホの「ダブル・スクリーン」を前提として番組を作ろう、ということだろう。

しかし私=52歳の(元ではなく現)テレビ好きは、「共存」戦略ではなく、「競争」戦略の可能性も残っているだろうと、まだ信じている。SNSや動画サイトからは流れてこない、ヒト・モノ・カネ・ジカンをたっぷりと費やした極上の国民的コンテンツで、テレビが、スマホを圧倒できる可能性があると、まだまだ信じている。

「いだてん」と、同じく日曜夜に放送されている、情報密度の高いドラマ=日本テレビ系「3年A組-今から皆さんは、人質です-」も、「スマホをいじりながら見ることができないドラマ」という一点において、「競争」戦略への可能性を十分に漂わせている。

「情報洪水」の中でテレビはどう生き残るか

少し古い資料になるが、総務省の『情報流通センサス報告書』(平成18年度)によれば、平成8年度(1996年)に対する平成18年度(2006年)の情報流通量は10年間で530倍になった。では、スマホとSNSの爆発的普及を経た平成最終年など、何倍に膨れ上がっているのだろう。見当もつかない。

その中で、テレビはどう生き残るか。そのための最もストレートな方策が、ヒト・モノ・カネ・ジカンを費やして生み出された、圧倒的な質・量・速度の情報で、ほかの情報を遮断してしまうことではないか。

休日を締めくくる夜に、テレビから溢れ出す「とつけむにゃあ」(とんでもない)な「情報洪水」――日曜夜の皆さんは、テレビの人質です。

スージー鈴木 評論家

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

すーじー すずき / Suzie Suzuki

音楽評論家・野球評論家。歌謡曲からテレビドラマ、映画や野球など数多くのコンテンツをカバーする。著書に『イントロの法則80’s』(文藝春秋)、『サザンオールスターズ1978-1985』(新潮新書)、『1984年の歌謡曲』(イースト・プレス)、『1979年の歌謡曲』『【F】を3本の弦で弾くギター超カンタン奏法』(ともに彩流社)。連載は『週刊ベースボール』「水道橋博士のメルマ旬報」「Re:minder」、東京スポーツなど。

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【逆転合格の作法】「日本一生徒の多い社会科講師」が語る、東大受験突破の根底条件
【逆転合格の作法】「日本一生徒の多い社会科講師」が語る、東大受験突破の根底条件
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT