40歳、歌舞伎町で俳句を生業にする男の稼ぎ方 子どもの頃から興味のあった道に落ち着いた

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「男だし“城”ってつけたかったんですよね。ビートたけしの『風雲!たけし城』とかね。あといつ潰れてもおかしくないように“砂”をつけました」

引き継いですぐの頃は、作家の石丸元章さんがよく訪れていた。

「会ってすぐに意気投合しました。お互い俳句をやってるって知らなかったけど、なぜか『俳句をしよう!!』ってなったんです」

2人で街を歩いたりしながら、俳句を作った。それを見ていたお客さんも「自分も作りたい」と思って句作りを始め、俳句の輪はどんどん広がっていった。

砂の城は、句会が開催される場所として注目されるようになっていった。

「句会は3年くらいやってますね。週刊誌に取材されたときに『アウトロー俳句』って取り上げられ方をされました。“アウトロー”は自称ではなかったんですよ(笑)。でも当時は今より、アウトロー色強かったですね。タトゥー入ってる人とか、厄介な仕事をしてる人とかいました。

石丸元章さんは病気で倒れてから、来なくなっちゃって。また来てほしいんですけどね。ちょっと照れくさいのかな」

始まった当初は、寝ないでずっと句会をやり続ける日もあったという。

20代の若い人たちがたくさん集う「砂の城」。店内は狭くてボロいが、和気あいあいとしてとても楽しい空間だ(筆者撮影)

「たくさんの句が集まりました。参加している人は200人ほど、全2000句を超えてました。従来の俳句にはない独特の面白さがありました。本にして、供養しないとなって思いました」

そうして2017年12月に「砂の城」から生まれた2000の俳句から北大路さんが選んだ『アウトロー俳句』が出版された。著書は注目されて、テレビなどのメディアで紹介された。

そして今年の3月には、北大路さんの新しい著書が発売される予定だ。

「俳句の入門書を出すつもり。人生相談みたいな本ですね。ツイッターで悩みを受け付けて、それに答える形です。1年くらいかけて書きました」

中には『筋ジストロフィー症で体が動かないんですが、どうしたらいいですか?』という重い質問もあったという。

こんな質問に答えるのは無理だと思ったけれど『動けないのがお前の武器だ!!』と勢いで答えた。

俳句で人生を歩みたい

「子どもの頃から俳句をやってて、俳句で食えるようになりたいってずっと考えてます。俳句だけで食えてる人はほとんどいないから。

とりあえずは地道に「砂の城」の営業を続けながら、イベントをやっていくしかないのかな~と思ってますね。実際、オープン句会というのをやっていて毎回お客さん入ってくれてます」

『新宿歌舞伎町俳句一家「屍派」アウトロー俳句』(河出書房新社)書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします

と、北大路さんは笑顔で語った。

北大路さんはとても破天荒で個性的なのだけど、繊細で真面目で優しい一面もありとても魅力的な人だった。

僕が句会に伺ったときには、20代の若い人たちがたくさん参加していた。おそらく北大路さんの魅力が彼らを引き寄せているのだろうと感じた。

新宿歌舞伎町の片隅にある狭く汚く今にも崩れそうな空間で、アウトローな人たちがギュウギュウ肩を寄せ合い俳句を詠み合う。

そんな不思議な空間がこれからもあり続けてくれるといいなと思った。

村田 らむ ライター、漫画家、カメラマン、イラストレーター

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むらた らむ / Ramu Murata

1972年生まれ。キャリアは20年超。ホームレスやゴミ屋敷、新興宗教組織、富士の樹海などへの潜入取材を得意としている。著書に『ホームレス大博覧会』(鹿砦社)、『ホームレス大図鑑』(竹書房)など。

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