都心の新橋に跋扈する「レンタルルーム」の謎 料金は30分1000円〜、何をする場所なのか?
「お客さん、ここ、来て。気持ちいいよ」
「おにいさん、リラックスできるよ」
「ねえ、休んでいってください」
ニュー新橋ビル2階――。紫、赤、青、桃色といった妖しいカクテルライトに彩られた店から、白衣やミニスカートの女性たちが微笑みながら手招きする。
JR新橋駅烏森口と日比谷口を出てすぐ目の前、機関車が静態保存されているSL広場に接する、新橋のランドマークとでもいうべき大型ビルの日常の光景だ。
訛りのある日本語で声をかけてくる妙齢の女性たちは「中国エステ」の店員たちだ。このフロアだけで約30店、駅からすぐ目の前のビルにまさかこんな妖しげなアジア的空間が存在するとは。
スタイルのいい細身の30歳前後の中国人女性が近づいてきた。
「はじめてですか?」
私ににじり寄る。私は案内されるがままに、カーテン越しの小さな空間に入る。そこは60代の年配女性とテレサ・テンに似た30歳前後の女性がいるだけだ。
私はカーテンで仕切られた固いベッドに案内された。ここでマッサージを受けるのだろうか。リンという30代の中国人女性だ。
ここだけ昭和のまま時間が止まっている
私は東京の中に潜む“異界”に惹かれ、そうした街の成り立ちや、街で生きる市井の人々を書いてきた。華やかに変化しつづける東京の裏側には、人知れず社会の矛盾を飲み込む街がある。
青山、赤坂、六本木、麻布と同じ港区に属する新橋は、山手線の有楽町駅と浜松町駅の間に位置する。
新橋は駅の東口と西口で街の様相が180度異なるのが特徴だ。東口(汐留口、銀座口)は電通や日本テレビ、パナソニックなど大手企業のインテリジェントビルが立ち並ぶ巨大ビジネス街だが、西口(烏森口、日比谷口)は都下最大の赤提灯街であり、オヤジサラリーマンの聖地と呼ばれている。ここだけ昭和のまま時間が止まっている。
今回、新橋の裏側を描こうと1年かけて街をさまよい歩き、単行本『新橋アンダーグラウンド』となって日の目を見た。
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