都心の新橋に跋扈する「レンタルルーム」の謎 料金は30分1000円〜、何をする場所なのか?
ニュー新橋ビルは闇市時代からこの地で営業してきた土地権利者が長い年月を超えて、このビルの区分所有権者になっているケースが多い。それゆえに、どの階も闇市的、昭和的だ。
新橋に都下最大規模の闇市ができたのは、複数の路線が集まる新橋駅という立地。駅前に広がる広大な平地もマーケットの好条件になった。ニュー新橋ビルのすぐ近くで戦後すぐ、父親の代から「蛇の新」という居酒屋を営業してきた山田幸一店主(76歳)によると――。
「親父に言わせると、朝、魚河岸から魚仕入れて店の前で自転車止めているとなくなっている。しょうがねえなと歩いていくと、橋のたもとでそれを売っていた。油一斗缶を売っていて天ぷら揚げるんで買ってみると、下半分が水だった。上から見たら油ですから。そういう時代でしたね。飲みにくるお客だって半信半疑で飲むんですから。カストリ焼酎は酒粕から取るんでアルコール度数が足りないからエチルアルコール入れて飲ませる店が何軒かあったんです。メチルは目が潰れるって言われてましたから」
エチルアルコールは消毒用、飲料用であるが、メチルアルコールは燃料用アルコールだったために体に悪影響をおよぼし、目が潰れるといううわさがたった。闇市時代、酒を飲むのも命がけだった。
ニュー新橋ビルは闇市の跡地に建てられたものであり、闇市時代からのバラック飲み屋の多くがこのビルに移転することになった。それゆえ現在の店もまた小ぶりで、どこか闇市的なごった煮の空気が漂っている。
新橋名物「レンタルルーム」
新橋を歩くと大きな謎に突き当たる。
汐留、虎ノ門、霞が関といった大ビジネス街が近くにあり、赤提灯が蝟集(いしゅう)する都心最大の殷賑(いんしん)地帯というのに、ここ新橋にはラブホテルが存在しないのだ。
焼き鳥の香ばしい匂いとともに居酒屋の通りを歩き雑居ビルを仰ぎ見ると、ネオンが控えめに光っている。
謎の答えはここにあった。
新橋名物「レンタルルーム」というやつだ。ほろ酔いの男女は狭い個室のレンタルルームにしけ込んでいるのだ。
このレンタルルームとは、貸会議室のようなものとはまったく違う。一言で言えば「簡易版ラブホテル」である。ラブホテルと同じく風営法の管轄下にあるが、大きな資金や何かと規制の多いラブホテルをつくるより、性風俗業者にとっては比較的簡単に開店できるメリットがある。
現在、レンタルルーム数は東京都内、特に新橋界隈で増えつづけ、古くなった雑居ビルにレンタルルームが新装開店するケースが目立っている。
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