あなたは親の背中が見えますか? 教えられた芸は忘れるが、盗んだ芸は忘れない

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<パンプキンからのコメント>

「勉強しろよ、俺みたいに苦労してほしくないからな」

このたびの寄稿文の行間には、お父様のお人柄のよさと、息子さんの聡明さを読み取ることができて、私も感動しました。普段は、勉強しない息子に対して、いっさい何も注意されないお父様が、ここ一番のときに「勉強しろよ、俺みたいに苦労してほしくないからな」と言われました。

説教調でもなければ、脅迫調でもなく、エビで鯛を釣る式でもありません。一時期、問題になった「お父さんのようになりたくなかったら、勉強しなさい」という、母親の貧しい言葉とも無縁の家庭です。学生さんは何百回何千回と反すうされて、お父様の短い言葉の中に、とても重要なメッセージを読み取られました。

一昔前に税務署で、高卒だが何十年も実務を積んできた人たちを、赴任してきたばかりで現場を知らない大学卒業したての若い所長が、あごで使ったり威張り散らす現場が多発し、改善策を検討中という新聞記事を読んだことがあります。このような事例はよく聞く話で、大卒でないというだけで、理不尽に辛酸をなめておられる人は多いようです。

このお父様は、普段はこのようなことに対して何も愚痴らず、子供の勉強に関しても一言も干渉する人ではなかったようです。口やかましく「勉強しなさい、勉強しなさい」と、効果の薄い言葉を念仏のように繰り返すだけの親とは正反対です。「俺のように苦労してほしくないからな」と親の願いとして、本人自身のために勉強することの大切さを、短く語っただけでした。この親子にはこれだけで充分だったところがすごいです。

普段から信頼で結ばれた親子関係だったことがわかります。見せるに足るだけの背中を持っておられ、子供さんから尊敬される父親だったからこそ、この短い言葉で、息子さんの心を揺り動かすことができたのでしょう。親の言葉を念仏のように(念仏に失礼ですが)聞き流すだけの子供とは大違いです。この言葉を重く受け止めたこの息子さんもすばらしい。

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