『誰も知らない』『歩いても歩いても』など、国際的に高い評価を得ている是枝裕和監督。新宿ピカデリほか全国で公開中の最新作『そして父になる』は、今年のカンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞、「世界の是枝」をあらためて印象づけている。
物語は子ども取り違え事件が題材となっている。エリート会社員で都内の高級マンションに住む野々宮良多は、6歳になる子どもが他人の子どもだと知る。実の子と暮らすか、育ての子と暮らすのか、父としての苦悩と葛藤を描きながら、家族の対比と「血のつながり、家族とは」という問いを投げかける。
歌手・俳優の福山雅治を主演に、その妻に尾野真千子、取り違えられた子の両親をリリー・フランキーと真木よう子ら、存在感のある出演者が名を連ねる。
そんなあらたな名作を世に出した、是枝監督に映画製作のきっかけと秘話を聞いた。
――今回の作品では、福山雅治さん演じる野々宮良多が、バリバリに仕事をするサラリーマンを演じています。しかし物語の中で家族のことを考えるきっかけが生まれる。ビジネスパーソンが、仕事と家族のバランスを考えるきっかけになると思うのですが?
どちらが正しくて、どちらが間違っている、ということではないと思っています。野々宮良多みたいな仕事をしていたら、子どもといる時間はそんなには取れないでしょう。でもそういう男が、自分の血のつながった子どもがどんな男に育てられたら嫌かなと考えた。自分も含めて、「子どもは一緒にいた時間だよ」って言われるのがいちばんつらい。だからいちばんつらいことを言われるようなシーンを描いています。
――「時間ではなく血だよ」というところですね。
時間を共有できない男、父親は拠り所がほかにないから、そういった価値観にすがるしかない。それが壊れていく話にしたいなと思いました。
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