人の欲望のカジノが経済危機を生んだ 『人類資金』阪本順治監督が見た経済の正体

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第2次世界大戦敗戦直後、旧日本軍の手によって隠匿された秘密資金「M資金」をモチーフにしたエコノミック・サスペンス大作『人類資金』が10月19日より公開される。
この「M資金」は、日本の戦後復興や反共計画に極秘に運用されてきた秘密資金として都市伝説化。現在では、最初から「M資金」というものは存在していなかったということが定説となっているが、それでも、この謎の秘密資金をネタに、資金繰りに窮した経営者たちから手数料をだまし取る詐欺事件が、幾度となく報じられてきた。
そんな日本戦後史の闇ともいえるテーマに挑んだのが、『亡国のイージス』でタッグを組んだ、作家の福井晴敏と阪本順治監督のコンビだ。佐藤浩市、森山未來、仲代達矢といった日本を代表する役者とともに、ユ・ジテ、ヴィンセント・ギャロといった国際色豊かなキャスティングを実現。M資金強奪計画を依頼された男が、やがて世界を支配するグローバルキャピタリズムとの戦いに巻き込まれていくさまを壮大なスケールで描く。
阪本順治監督に、本作が生まれたきっかけ、グローバル化が進む経済状況について監督自身の考えを聞いた。

――金融をテーマにした作品を手掛けるということで、いろいろと勉強をされたそうですね。

それこそ「TOPIXって何?」「ダウ平均株価って何だ?」といったことから始まり、そうこうしているうちに、2~3年経ってしまった。いまだにわからないことだらけですが、当然、わからないままではこの映画を作れない。撮影が終わった後にこうして何かを語らなくてはいけない機会もありますから、無知さを露呈しちゃ駄目だなと思ったのです。でもこういう映画を作らなければ、僕も無知のままで映画を作り続けてきただろうし、興味のないまま終わっていたと思います。

――そもそも阪本監督が「M資金」に興味を持ったのが33年ほど前だそうですね。

日経新聞社から出版された『M資金―知られざる地下金融の世界』という、高野孟さんが書いたルポルタージュを読んだわけです。33年前といえば、僕がまだ美術助手をやっている頃でしたが、将来は監督になるつもりでいたので、その本は引っ越しのたびに必ず書棚のわかる場所に置いていました。

――そこまで「M資金」が心に引っかかっていたのは?

たとえば歴史に興味があるとしたならば、その歴史の裏側をのぞきたくなるじゃないですか。戦中、戦後というときに、そのダークサイドに何があったか興味があるわけですよ。

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