戦争がどう始まったか、心して描いた

巨匠・降旗康男監督が『少年H』で伝えたいこと

妹尾河童初の自伝的長編小説「少年H」は、1997年の刊行から15年たった今でも重版を重ね、上下巻売り上げ340万部超のミリオンセラーを記録。異国情緒あふれる神戸を舞台に、「戦争」という激流に巻き込まれながらも、勇気、信念、愛情をもって生き抜いた「名もなき家族」の物語である。そんな同作を映画化した『少年H』が8月10日から全国東宝系で公開される。物語の柱となる「少年H」の父と母を演じるのは、実生活でも夫婦である水谷豊と伊藤蘭。テレビドラマ「事件記者チャボ!」以来、およそ30年ぶりの夫婦共演作となる本作は、早くも話題を集めている。
本作のメガホンをとったのは、『冬の華』『居酒屋兆治』『あ・うん』『鉄道員(ぽっぽや)』など、日本映画史に燦然と輝く名作の数々を監督してきた名匠・降旗康男。戦時下であっても、時流に流されることなく、強くたくましく生き抜く家族の姿を、時にユーモラスに、時に繊細に、時に力強く描き出している。今回は、戦前生まれの降旗監督に、昭和初期の激動の時代を描き出した本作に対する思いなどについて聞いた。

――「少年H」を執筆した妹尾河童さんは、これまで同作の映画化オファーを断り続けてきたと聞きました。そんな妹尾さんが今回、映画化を許可した経緯はどのようなものだったのでしょうか?

プロデューサーがお父さん役を水谷豊さん、監督を僕ということで話を持っていったのです。河童さんも、それならいいと言ってくれた。ただ、本人に会って確かめたいということだったので、ホテルで河童さんと会いました。「初めまして」とあいさつをしたら、河童さんから「本物ですか?」と言われて。「触ってください」と返しました(笑)。

「落とされた側」の写真がない

――妹尾さんが降旗監督ならと映画化を許可したのも、この時代を降旗監督がご存じだからというのもあるのではないでしょうか?

それはあったと思います。しかし、当時を知っていると言っても、暮らしていた場所によっていろいろです。僕の郷里の長野県はB29の大編隊の通路でしたが、爆撃と云えるような爆撃は受けませんでしたし、敗戦まじかには僕(10歳)がいた松本にも艦載機が飛んできましたが、低空で示威飛行を行っただけでした。だから本当の空襲や爆撃について僕は知らないわけです。

もちろん若いスタッフも、実際の戦争を知りません。だから当時の資料を集めて調べる以外にしょうがなかった。そうやって作った作品ですが、爆撃に実際に遭われた方からも、あのとおりだったと言ってもらえたので、よかったと思っています。同じ時代を過ごしたといっても、いろいろですよね。

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