――当時の資料を調べるのも大変だったのでは?
たとえば爆撃と一言で言っても、爆弾を落とす側、アメリカ側からの写真はいくらでもある。でも爆弾が落ちてくる様子を、落とされる側から撮影した写真はない。焼夷弾が破裂する写真もないので、焼夷弾が破裂するとどうなるかもわからない。だから焼夷弾について調べるため、自衛隊や防衛大学に行きました。そこでは自衛隊の隊員さんを教育する資料として、焼夷弾が落ちたらどういう風に破裂するのか、ということを解説しているものがあった。そうやって調べていきました。
『ALWAYS三丁目の夕日』で日本のCG技術は変わった
――そのかいあって、空襲のシーンは真に迫る、恐怖を感じさせました。本作ではその空襲のシーンや、当時の昭和の街並みを再現するためにCGが効果的に使われています。最新テクノロジーに偏見を持たず、積極的に取り入れているように見えます。
もちろんテクノロジーが幼稚なときだったら取り入れるのは嫌ですよ。ただ、『ALWAYS 三丁目の夕日』(2005年公開)が出たときに、日本のCG技術が画期的に飛躍したと感じた。CGがここまで発達したからこそ、この『少年H』を引き受けようと思った。CGがなかったら、戦争当時のことを映画にするのはなかなか難しいと思う。
――監督自身もCGの勉強をされたそうですね。ベテランである監督が貪欲に新たなテクノロジーを吸収しようとする姿がすごいと思うのですが。
僕はただ若いスタッフたちに「ああならないか」「こうならないか」と言っていただけですよ。僕ひとりでは何もできませんから。新しいことを吸収するというよりも、テクノロジーでここまでできると思ったら、「じゃもうひとつ試みてくれないか」と注文する。すると、みんな試みてくれて。それでさらにうまいことになった。それを実現してくれた、若いスタッフに感謝する以外にないですね。
――注文のハードルを高めに設定するなど、若いスタッフのパワーを引き出す方法はあるんですか?
ハードルを高めに設定するということはないですが、やはり注文を出し続けるのがいちばんではないでしょうか。とにかく相手に尋ねるのがいちばんいい関係だと思います。こちらが尋ねて、向こうが答える。それを踏まえてもう一回尋ねてみる。それを積み重ねるのがいい関係だと思います。
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