歴史を変えたコンテンツの共通点 角川歴彦×川上量生対談(3)
連載第1回目―「情報化社会で真の知識人は「コミュ障」の人間」はこちら
連載第2回目―「5年後、日本のメディアコンテンツはこうなる」はこちら
——ニコニコ動画では、クリエーターに才能を発揮させるための仕組み作りで、どのようなところに気をつけていらっしゃいますか。
川上:ひとつは、ユーザーさんの支援です。ドワンゴというのは、いわば引きこもりの会社なんです。引きこもりの会社にしてみたら、クリエーターと付き合うなんて、もともと苦手なジャンルなわけです。だから、そもそも密に付き合おうという発想がない。
僕が興味あるのは、そうしたクリエーターたちがニコ動というインフラに変化を加えることによって、どういうふうに変化するのか。どのように生態系を作ったり、いったんできた生態系が成長したり、衰退したりするのか。そういったことにものすごく興味があります。
ニコ動を作ったときにひとつだけ念頭に置いていたのは、2ちゃんねるにあったFLASH板。YouTubeがはやる前にFlash動画が一時期すごくはやって、有名なのは「のまネコ」です。「恋のマイアヒ」(モルドバ出身の音楽グループO-Zoneの曲。ルーマニア語の原曲を日本語として聴いた「空耳」の歌詞をアニメ化したFlashムービーや、そこに登場するキャラ「のまネコ」が大人気となった)で盛り上がったんだけれど、2年くらいで自然に廃れてしまったのです。
角川:なるほど。
川上:CGM(消費者生成メディア)で爆発的人気が出ると、ユーザーもこれは自分たちの文化で、企業は介入してくれるなと言うのだけれども、ユーザー自身が管理しているコミュニティはだいたい2年で崩壊するんです。それをどうすれば長続きさせられるのかというのが、ニコ動を作ったときの最大のテーマでした。で、僕が考えたのは、ユーザーの思いどおりにやったら2年で潰れるんだから、たぶんユーザーが嫌がることの中に正解があるだろうと(笑)。そこは、嫌がられても切り込んでいくしかないなと僕は思ったんですよ。
それは、ユーザーから見ると、ある種のコントロールだったり、金銭的なモチベーションを持ち込んだり、既存のコンテンツに対する妥協だったりするようなことだったと思うのです。そう見えるような行動でも、あえてする。それによって、コミュニティに揺さぶりをかけると、何が起きるか。