歴史を変えたコンテンツの共通点 角川歴彦×川上量生対談(3)

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川上:『スターウォーズ』なんかは典型ですよね。

角川:そうそう。それから『マトリックス』(1999年公開の米国SF映画。キアヌ・リーブス主演)。配給会社のワーナー・ブラザーズさんもどう扱っていいかわからなくて、僕に「見てくれ」と声をかけてくれた。それで、「ねえ、角川さん、ひどい映画でしょう?」と言うんですよ。

川上:え?(笑)

角川:僕は「これ、面白い」と言ったの。そうしたら、「ほんと? ほんと? ほんと?」と3回確認されました(笑)。後で聞いた話では、「角川さん、あの言葉に僕は勇気づけられたんですよ」と言うわけ。米国のワーナーから送られてきたときも、いちばん後ろに紛れ込んでいて、うまく判断できなかったそうです。だから、メインストリームで出た作品が、必ず当たるってことはないんですよ。気合い入れて作っても、空振りが多くて(笑)。

歴史を変えたコンテンツの共通点

川上:歴史を変えたコンテンツは、みんなそうですね。アニメの世界でも『ヤマト』『ガンダム』『エヴァ』(新世紀エヴァンゲリオン)と、みんな視聴率低かったですもんね。

角川:『ガンダム』は、いつ打ち切りになってもおかしくなかった。実際、全52話の構想が43話に短縮されたと言いますから。テレビアニメの全盛時代に、平均視聴率で5%くらいしか取れていなかった。もうほんとにひどい。だけど、ほかのどの作品よりも、息の長いヒット作になりました。でも、「角川さん、ガンダムを褒めるんだったら、アンパンマンはもっと偉大だ」と言う人もいて。アンパンマンはテレビで成功したことは1回もないそうです。キャラクターはあれだけ認知されているのに。

アンパンマンは、ひたすら作者のやなせたかしさんがあちこちに持ち込んで、何でもいいから商品化してくれと言って歩いて今があるんだって。だから、作品が大ヒットしてキャラクター商品が売れたというのは、そうそうないんです。

川上:大ヒットしたやつはすぐ消えるんでしょうね。

角川:そうなんです。短期間で消耗しちゃう。ピカチュウだって、ポケモンの中では脇役でしょ?

川上:なんでピカチュウから人気出たんだっていう。

角川:キャラクターやコンテンツのストーリーは本当に面白い。だから、この世界に深くハマっちゃうんだよね。1回ハマると抜けられない(笑)。そういう人がたくさんいるから、5年後、10年後も、日本のコンテンツ産業は大丈夫だと思うのです。

(第4回は10月24日に公開予定です)

(撮影:西村 康(SOLTEC) 構成:田中幸宏)

東洋経済オンライン編集部

ベテランから若手まで個性的な部員がそろう編集部。編集作業が中心だが、もちろん取材もこなします(画像はイメージです)

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