歴史を変えたコンテンツの共通点 角川歴彦×川上量生対談(3)
既存のコンテンツの囲い込みに興味はない
角川:いろいろ手掛けていますよね。僕も、「ニコニコミュージカル」に付き合っています。2011年の秋には『源氏物語』をミュージカルにしてもらって。
川上:ありがとうございます。僕はそういう意味では、今あるコンテンツの囲い込みには興味がないんです。IT業界の人たちは、だいたい今あるコンテンツのマーケットをそのままぶん取ろうという考え方をするんですけど、自分で作ろうとはしない。でも、僕は新しく作るほうに興味があります。
角川:そんなニコニコミュージカルから、人気の俳優が生まれてくるわけ。みんな素人なのに。
あのときは、映画『源氏物語』に合わせてミュージカルを作ってもらったので、音楽は映画と同じ作曲家にお願いして、テーマソングも同じようなものを作ってもらって、みんなにそれを歌ってもらったんだけど、すごい才能の集まりで。映画の衣装を持ち込んで、光源氏、紫の上、紫式部も出てきて、みんなちゃんと演ずるんだよ。男女を問わず拍手喝采でした。あれは感動しました。
出てくる人たちは、昨日までは普通の少年少女だったのに、もう自分たちはミュージカルの俳優だって自覚を持っている。そんなふうに、いろんなタレントがどんどん生まれてきているわけです。
そういえば、ニコニコ生放送って今、何本くらいあるんですか?
川上:ユーザーさんの放送は今、夜間のピークタイムで5000番組ぐらいですね。公式番組だけでも、同時に10から20ぐらいはやっています。
今あるプラットフォームから従来のコンテンツも進化させると同時に、プラットフォーム自体も新しくしていかなければいけないと思っています。そのときに、既存のクリエーターに協力をお願いしても、むしろ実績のあるクリエーターほど断られる。危険なジャンル、未知の世界なので。だから僕らは、そこは自分たちのリスクで作ろうと思っているんですよ。