――監督には映画で登場する子どもと同じ年くらいの娘さんがいると伺っていますが、やはりお子様のことも考えながらこの作品を作られたのでしょうか?
6歳になる娘がいるのですが、自分が娘との関係の中で抱いている不安や葛藤や喜びや後悔など、いろんなことを主人公には重ねていたりします。
――仕事を優先しがちになるなど、作品との共通部分があるのでしょうか?
それはものすごくあります。ソファーの間から父の日のプレゼントの花の茎だけが出てくるシーンは実話です。そのとき、ありがとうって言ってもらったのに、娘の気持ちをないがしろにして、相手の気持ちを雑に扱っていることに気づくみたいな、非常に自分の中で後悔として残っていた。それをそのまま映画のシーンにしました。
――是枝監督は普段どのように子どもと接していますか?
撮影が始まってしまうとほとんど会うことはできない。でも、今年はなるべく土日の休みは一緒にいるようにしている。今、縄跳びができるかできないかという状況なので、公園に行って縄跳び教えたり、バトミントンをやったり、いろいろやっています。2人で映画観に行ったりもしました。
「40歳過ぎて子ども作るのは大変」は実感
――リリー・フランキーさん演じる斎木雄大がセリフの中で、「40歳過ぎてから子ども作るのは大変だ」というセリフがありました。それは監督ご自身の体験から来ているのでしょうか?
実感です。体がもちません(笑)。どこか連れて行ったりするのはなんとかなりますが、たとえば鬼ごっこしようといって始めても途中でやめてくれない。だからもうゼーゼーいってしまう。3、4歳までならなんとかなるけど、5歳では結構体力あるから、本気で逃げないと捕まってしまう。何十分も一緒に鬼ごっこなどをしていると、唾から血の匂いがしてきて本当につらいですね。夫婦でバトンタッチしないと子どもと遊べないという状態になると、50を過ぎたときはどうなるのか、と思ってしまう。そう考えると30代でつくっとくべきだったと思いました。
――映画を作るきっかけについてですが、福山さんから、ぜひ是枝監督と一緒に映画を作りたいという話しがあったと伺っています。今回、赤ちゃん取り違え事件を題材にした経緯を教えてください。
最初に4つほどプロットをお渡ししました。中には心臓外科医の話とか、時代劇もありましたが、僕の等身大でできると思ったのが今回の『そして父になる』です。どれにしましょうと、キャッチボールしている中で、福山さんもこの作品に針が振れた。僕もどうせやってもらうなら、今まで福山さんがやったことのないものがいいと思っていた。嫌なやつにしてあまり父親っぽくない男の話にしよう、と考えてるうちに、なんとなくじゃあやってみようかという話になっていきました。今までにない福山さんの演技を引き出せたと聞かれれば、出せたかなと思っています。たぶんこういう父親はやったことがないだろうなと思っていましたし、嫌なやつっていう、これまで見たことのない役を演じてもらいました。
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