私が起業を決意した同僚の「ある一言」

Origamiの康井義貴CEOと語る(上)

康井:ですので、DCMで働いていた当時から、どのタイミングで起業しようかというのは、つねに自問自答していました。その僕の背中を押したのは、アメリカの同僚で仲良くしていたピーター・スーです。彼はUCバークレーを出てゴールドマン・サックス、DCMに就職するという典型的なエスカレーターを上っている優秀な人間だったのですが、僕より半年前にDCMを辞めて、「歌手になる」と言い出したのです。

僕は、ピーターが音楽好きなのは知っていたので、音楽関連のベンチャー企業を立ち上げると思っていました。だから、「ピーター、辞めてどうするの?」と聞いたら、「歌手になる」と答えられたときは本当に驚いて、「なんだそれ(笑)。本当に?」と聞き返したくらいです。そしたらピーターは真顔で、「僕は音楽が好きだから、路上に出て、あるいはバーに行って歌うんだ」と語り、ある言葉を言ったのです。「YOLO(ヨーロー)」。「You Only Live Once」という「人生は一度きり」という意味の言葉です。

それが僕にとっては衝撃的でした。優秀で何でもできてしまう同僚が、「自分の本当にやりたいことは音楽だから僕は歌う」と、当たり前に“飛び出せる”姿を見て、「格好いいな」と思ったのです。僕が「どのタイミングが正しいのか」と考えていたことは、ナンセンスだったと。「タイミング」ではなく、「やりたいのであればやればいい」と思うように変わりました。それで、急いで準備を行い、昨年、Origamiという新しい会社を始めました。

「ロジック」を飛び超えて「好きなこと」ができるか

伊佐山:「YOLO(ヨーロー)」は、多くの人は頭ではわかっています。その一方で、シリコンバレーでさえも、体現している人は多いわけではありません。頭では「自分のやりたいこと」をやらないといけないとわかっていても、実際には躊躇している人が多い。なぜか――と言うと、自分で「これをやろう」とすると、やらない理由のほうが頭をよぎり、ついつい先延ばしにしてしまう。そして気づいたら、言い訳を見つけて「ここでもできるから」と、誰かがつくったすでに成功している会社に転職したりする。本当は自分の理想とは違うことに気づいていながらも、そのほうが「楽」だからです。だから、多くの人は自分の判断で飛び出すのではなく、外的なきっかけが多い。

ピーターは僕の部下で、個人的には応援していますが、ミュージシャンとして成功するかはわかりません。ただ、高学歴、高収入を捨ててプータローになり、辞めてから2年半、いまだに頑張っている。

ピーターがこの先、どのような人生を歩むかはわかりません。ただ、ピーターのような「ロジックを超えて、好きなことに飛び込む人」が身近にいたことで、ヨッシーがOrigamiを起業することの背中を押したことは、すごいインパクトだと思います。ヨッシーがOrigamiで大成功したら、そのきっかけをつくったことになるのですから。

僕もヨッシーが先に起業しているので、プレッシャーを感じました(笑)。「起業しろ」と偉そうに言っているのに、僕自身はさんざん若い会社を手伝ったことはあっても、ゼロから全部やったことはない。ピーターが背中を押してヨッシーが飛び出してOrigamiを起ち上げ、僕もWiLを起ち上げた。この流れが、日本全体に広がれば、僕の目指している「日本を起業家大国に」というのは、できるのではないかと思っています。

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