蒲田の小さな鮨屋が世界的名店になったワケ 世界的企業にも通じる「顧客価値」の再発見
“何か困っていることがあるなら、それを解決しよう”
どんな事業でも、設立当初の発想、目標はとてもシンプルだったはずだ。
しかしながら、事業が拡大し、組織が大きくなり、さらなる成長を目指す中で、いつしか、“顧客を喜ばせたい”、あるいは“顧客が満足してくれる顔が見たい”といった部分が見失われていくことが多い。
“短期的なROI(投資した資本に対して得られた利益)を整える”ことを目標とし、数字目標を達成しやすい打算的なマーケティングを優先せねば、“結果としての数字”を出せないジレンマに陥るからだ。
もちろん、赤字垂れ流しでは事業は継続できない。しかしながら、“顧客価値とは何なのか”“自分たちが対価を得ている価値の源泉とは何なのか”を見つめ直したとき、そこに新たな気づきはないだろうか。
顧客価値とは何かを見失い、コストを切り詰めるために魅力を失っていく製品やサービス、それにより毀損されていくブランド価値と衰退する企業――。
新しい世代に向け“最高の笑顔を得る歓び”を伝えたい
さてこの初音鮨。2018年3月、女将のみえ子に“骨転移”が発見され、8カ月間休業していた。体幹部にある大多数の骨にがんが転移し、さらに肺にまでそれが広がっていることがわかったためだ。
しかし放射線治療に耐えたのち、再び11月に初音鮨を再オープンした。理由は“未来”を見据え、自分たちが積み上げてきたものを、多くの料理人に体験してほしいと考えたからだという。
関東地区で回転ずしチェーンを展開するグルメ回転ずしの草分け「銚子丸」と提携し、幹部候補の職人を招き入れ、調理補助として自分たちのノウハウをすべて教えていく。全国の若手職人たちも、中治と同じツケ場に立ちたいと申し出ている。
2人だけで明日をも顧みない店だった初音鮨だが、現在は改めて“すしの未来を切り開く”場へと衣替えして営業が続くこととなった。
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