「日本の常識は海外の非常識」は病院にもある 性善説が蔓延している医療現場で大丈夫か

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日本の組織では、一度ルールが定められて周知されれば、性善説に基づいて皆がルールにのっとって動くだろうと考えられる向きがあるが、多くの場合にはルールを順守しているかどうかまでフォローされていない。

したがって、そのルールの順守率を病院側に聞いても、明確な答えが返ってくることはない。「うちの病院ではこういうルールになっているから、みんな、ちゃんとやっていると思います」。こんな回答ばかりである。

一方、国際認証の考え方はまったく逆だ。ポリシーがあっても現場ではそのとおりに運用されないと考え、ポリシーが適正に実行に移されているかつねにチェックが行われる。これが、医療機関の質を保証する。

医療機関でエラーが起こると、患者の死に直結することも少なくない。しかし、医療機関のエラーをゼロにすることは不可能である。今は起こっていないエラーでも、将来起こりうる可能性のあるエラーをエビデンスに基づく仕組みに変えて、そのリスクを最小限に抑えたい。そのための審査であり、認証なのである。

日本の病院のあり方が問われている

以上の論点を整理すると、医療の質を高めるために必要なポイントは以下のとおりとなる。

原則
・患者誤認予防策のルールが確立されて、それに沿って運用されているか。
・患者の安全と同じレベルで職員の安全も守られているか(患者の安全は職員の安全から)。
整理整頓
バックヤードまで清掃が行き届いているか、職員が過ごしやすい環境になっているか。
感染管理
清潔と不潔のゾーニングはできているか、PPE(個人防護具)使用のルールは病院内で確立されて実践されているか。そもそも病院の感染管理プログラムは存在するか。換気回数は適切か。針刺し事故の予防、報告経路のルールは確立されているか。
人事管理
一人ひとりの業務、能力、スキル、期待値は文書で明記され、それに基づいて評価されているか。入職時のオリエンテーション、その他必要な教育は受けているか。
品質管理
質向上を数値で測定しているか。
食品管理
患者に提供する食事を調理する厨房の衛生面は定期的に確認されているか。
災害時の備え
万が一の時の備えは周知され、スタッフが皆訓練を受けているか、避難経路は誰にでもわかるように明記されているか。
資源管理
必要な資源が必要な場所へ配分されているか、過剰もしくは不足ではないか。そもそも管理されているか。

時代が変われば、制度も文化も、そして患者構成も変わってくる。変化に対応し、医療の質を高められる組織になれるか。日本の医療機関は今、それを問われている。

車 藍 JMT Joint Advisoryゼネラルマネージャー

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くるま あい / Ai Kuruma

東京都出身。名古屋大学経済学部経営学科卒業。税理士法人にて医療財務コンサルテーションの経験を積んだ後、JCIコンサルティング会社「JMT Joint Advisory」へ転身。JCIのその猛烈な教育的要素に魅了され、JCI認証取得の現場のサポートを行っている。また、同時に審査と医療の特化した通訳者のオンライントレーニングの運営兼講師を担っている。一般社団法人MQMA(Medical Quality Management Academy)理事。

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