「日本の常識は海外の非常識」は病院にもある 性善説が蔓延している医療現場で大丈夫か

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国際認証で求められる品質改善は、目に見える改善である。つまり、数値化が必要ということだ。冒頭で記述したが、臨床面と非臨床面が両輪となって医療機関は運営されている。数値化もこの臨床面と非臨床面の両方のデータが求められる。しかし、日本ではデータの管理が甘い病院が少なくない。

臨床面のスムーズな運営には非臨床面のサポートが重要だ。安全を守るためには、どのようなリスクがあるのかを精査しなければならない。仮にリスクが見つかった場合、当然それに備える必要がある。

災害はいつどこで発生するかわからないものだ。手術中に地震が起きたらどうするのか。厨房で火災が起きたらどうするのか。したがって、災害訓練は雇用形態に関係なく、病院内にいる関係者全員が対象となる。

患者へ医療サービスを提供するスタッフの質は医療機関が保証しなければならない。医療機関にはその使命に寄与するための人的資源の管理も必須となる。もちろん、臨床の人的資源と非臨床の人的資源の両者である。さらに、医師や看護師が持っている免許が本物かどうか、改めて検証する必要もある。

性善説で病院が管理できるか

審査の過程で議論となるのが、ハンコ文化である。

医療機関では、カルテや議事録をはじめとし、膨大な資料が日々作られ、書類には出席や承認の印として押印がある。これは日本の会社ではどこでも似たようなものであろうが、病院で扱う患者の個人情報は、一般企業の顧客情報とは一緒に語れないだろう。情報の扱いを誤れば、命さえ左右されてしまう可能性すらあるからだ。

そこで、病院を審査する際には、まず、ハンコはどのように管理されているのか聞く。そのうえで、本人しか使えないようにセキュリティーがかかっているのか確認する場合もある。

おそらく大抵の日本人は性善説の立場から、他人のハンコを勝手に使う人などいないと思うことだろう。また、ハンコを押す人が本人でなくても、代理押印であってもハンコの持ち主が押印したと見なされる形式主義もいまだ根強く残っていることだろう。

だが、命に関わる情報である以上、管理をおろそかにすべきではない。性善説と形式主義を廃し、明確な管理方針の下で情報を扱うべきだろう。

国際認証では、病院のポリシーと呼ばれる方針書・手順書の作成が求められる。審査では、病院のポリシーで定められたルールにのっとって現場で運用されているかどうかがチェックポイントとなる。ここでも日本特有の性善説が顔を出す。

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